「『御堂さん』よもやま話」(上旬) 表紙は若い女性

======ご講師紹介======

菅 純和さん

仏教月刊誌『御堂さん』の編集長・菅純和さんは昭和26年大阪市生まれ。

龍谷大学文学部仏教学科に入学され、同大学卒業後、大阪御堂筋にある浄土真宗本願寺派・津村別院で『御堂さん』の編集委員に従事。平成14年からは『御堂さん』編集部の編集長を努めておられます。

また、大阪市にある浄土真宗本願寺派・光明寺のご住職でもあられます。著書に『御堂さん』掲載中の『仏事の小箱』等があります。

==================

『御堂さん』編集長 菅 純和さん

 『御堂さん』は、昭和五十三年四月に出版されたのが第一号です。

それに掲載されている写真が北御堂、津村別院の屋根でございます。

そういう写真を白黒で掲載しました。

今の『御堂さん』と比べてもらいますと、全然違うということがおわかりになると思います。

 昭和五十三年から二十七年間、おかげさまで今では東京以外から出版されている出版物の中で、日本で一番発行部数が多いんです。

特に八月号のお盆号は二十七万という数が出ました。

平常でも十万の数が出ますから、これは大変な数なんですよ。

そうなるために、どういうふうにやってきたかといいますと、いろいろございます。

 まず、今月皆さんにお配りした『御堂さん』十一月号ですね。

表紙は以前は違ったんですけれども、今ではずっと若い女性でございます。

一月と八月号では、プロのタレントさんとかモデルさんを起用しまして、他の十カ月は一般のお嬢さんを募集して掲載しております。

 しかし、これも何かと「何で表紙は若い女性でないといけないんですか。

何で年取ったらあきませんのんか」と言われるんですが、これは難しい問題なんです。

別に若くなくてもいいんです。

ただ『御堂さん』は売り物なんですよ。

別にもうけなくてもいいんですけれども、やっぱり赤字を出す訳にはいかないんです。

 そうすると、やっぱり買ってもらうということになるんですが、お年をめした方が表紙に載ると売れないんです。

それだけの理由で若い女性を起用するんですが、これもジレンマなんですよ。

だって仏教の教化誌ですよ。

 仏教の教化誌ですから、世間の価値観に迎合しては本当はいけないんです。

「若いのは良い、健康だから良い」というのは世間の価値観ですよね。

仏教の価値観というのはそうではないですね。

 若い者もやがて年老いてゆくんだよ、というふうに言っていくんですね。

人間は移り変わっていくんです。

 『御堂さん』の中には漫画のページがあります。

その漫画は関西では有名な篠原さんという漫画家に描いていただいているんですが、私はまずその方に「○○という仏教の言葉があります。

これについて漫画にしてください」と言うんです。

 十一月号は確か「不妄語」ですね。

「うそをつくな」という戒めを、仏教では「不妄語」といいますけれど、それについて漫画にしていただいて、最後に私がもう一度言葉の意味を解説しているんですよ。

 実は、その解説文の中に私の似顔絵が出てきます。

その似顔絵を見ますとね、鼻の下にひげがあるんですよ。

今の私にはありません。

去年の今頃剃ったんですよ。

平成二年から十年以上伸ばし続けたひげを剃りました。

何で剃ったかといいますと、はじめは黒々とした非常に立派なひげだったんですけど、年をとってきますと真っ黒なひげがだんだん白くなってくるんです。

いわゆるごま塩というやつですね。

 髪の毛の方は白がまじってもそんなに思わないんですけれども、ひげは黒いのに白がまじってくると非常に汚らしいんですよ。

それで、もうみっともないのでそったんですよ。

これ何で私のひげが黒から白く変わっていったのかといいますと、これは老化。

年をとっていくということですね。

 つまり人間は変わっていくということですよ。

だから世間の言葉で一番の「うそ」の言葉は何かといいますと、「あなたいつまでも変わらないわね」ですよ。

けれど、実際あれはうそですよ。

変わらないのは化け物でございます。

人間は変わるものですからね。

だから本当は仏教の教化誌というのは、若さというものを申してはいけないんですよ。

 もともとこの『御堂さん』といのは何かというと、こうして浄土真宗本願寺派のお寺の中に入ってくださる方、本堂にお参りして仏さまに手を合わせてくださる方のための本や出版物はもう山ほどあるんですよ。

いろんな出版物がありますが「お寺の門前を素通りしていく人」に対する出版物はなかったんですよ。

それで、なんとか世間一般の方に、いわゆる普通の、例えばお念仏もご信心も親鸞聖人もご存じない、そういう方に少しでも仏さまの世界とは何かということを知っていただきたい。

その入り口にでもなればという願いで作り始めたのが、この『御堂さん』でございます。

 この『御堂さん』、特に最初の方の特集にはたくさんの有名人が出て参ります。

なぜ有名人を起用するのかといいますと、これの理由はたった一つです。

有名人でないと読んでくれないんです。

同じことを言っていても、やっぱり人は名前で見るんですよ。

例えば、由紀さおりさんが出ておられますね。

これは何で由紀さおりさんに出てもらうかといいますと、まず由紀さおりさんに出てもらうかといいますと、まず由紀さおりさんが出ているというそれだけで人は注目します。

一方、これをうちの向かいのおばさんが書いてたって誰も読んでくれません。

その違いなんですね。

 それは世間の価値観なんですが、それを最大限に利用してこっちへ取り込んで、そしてその中から本当の親鸞聖人のあじわい、お念仏のあじわいを知るきっかけになってもらえればいいなという願い出作っておるんです。