『真あたらし いのち響かせ 南無の声』

 生まれて間もない我が子を抱いて「お母さんよ!」と呼びかける母親の顏は微笑みに満ちています。

けれども、それを聞いている赤ちゃんは、ただニコニコしているだけで、言葉の意味を理解することなど出来ませんし、たとえどのような「天才」であっても生後数カ月で「お母さん!」と言えた人もいません。

 それなのに、どうして母親は赤ちゃんに向かって、何度も何度も繰り返し「お母さんよ!」と呼びかけるのでしょうか? 実は「お母さんよ!」という呼びかけは、赤ちゃんが自分の胎内に宿ってから誕生するまでの様々な思いや、愛情の全てを集約・凝縮した言葉で、まさに内からわき上がってきて言わずにはおれない名乗りなのです。

 赤ちゃんは、母親の愛情を一身に受けながら育まれる内に「この人こそが私を愛してくれる大切な存在だ!」ということを体感し、やがて「お母さん!」と呼ぶようになるのです。

もちろん、呼んでいるのは赤ちゃん自身ですが、そう呼ばせているのは生まれてからずっと「お母さんよ!」と名乗り続けてきた母親の願いです。

 同様に、南無阿弥陀仏という仏さまは、私が願うに先立って、私のいのちを迷いから解き放ち、「限りないいのちと限りないひかりの世界に迎え摂らずにはおかない」という尊い願いを「南無阿弥陀仏」というひと言に凝縮して、常に呼びかけていて下さいます。

このような意味で、私が「南無…」と称えるそのままが、まさに私が仏さまから喚ばれている事実そのものだといえます。