『人は家庭をつくり 家庭は人をつくる』

ご法事に行くと「子どもの頃は祖父母の家へ行くと、『先ず仏壇に手を合わせてきなさいよ』とよく言われました」と懐かしそうにお話しされる方がおられます。

親から子へ、子から孫へ。

身近な家族というつながりの中で、受け継がれてきた宗教的な営みを、有り難く味わわせていただくことです。

ところが、核家族化が進み家族の形態が変わると共に、そのような家庭での宗教的雰囲気は希薄になってきているように思われます。

けれども、食事の前後の「いただきます」「ごちそうさま」といった感謝の気持ちを表す言葉をはじめとして、時代や環境が変わっても、私たちが決して失ってはいけない基本的なことは、大切に受け継ぎ伝えていきたいものです。

「子は親を写す鏡」という言葉をよく聞きます。

私たち大人の言動を、そのまま同じように子どもたちは真似て行きます。

そうすると、人を育てることの根底には、まず我が身を深く見つめ、真似をされても恥ずかしくない行動を心がけることが課題として横たわっているといえます。

そのような意味で、育てることを通して常に自身を省みることにより、私も同時に育てられているのだといえます。

人の成長とは、決して肉体的なことばかりではなく、むしろ心の成長にこそ重きを置く必要があります。

「しつけ」という言葉は「躾」と書きますが、内面からわき上がる美しさを表しているようにうかがえます。

親から子へ、子から孫へと、身近な家庭という輪の中で、人として生きることの大切さを自らの生き方を通して伝えていきたいものです。

いつの日にか、その姿に子どもたちが染まることを願いながら。