「聞いてこそ伝えられる」(下旬) 気持ちを活かす

 

 もし、これが

「なんでこんなに待たせるのよ」

と頭ごなしに言ってしまったら、

「こっちだってな、出かける前に電話かかってきたんや」

とケンカになったことでしょう。

こんなふうにすればいいんです。

すると会話がスムーズに行くと思います。

あと、ちょっとしたことですけれど

「言葉をなかなか伝えられない」

という人がいます。

 そういう方には、いい教科書があります。

電車に乗るときに聞こえて来る案内です。

これは的確に教えてくれます。

JRの方の案内をぜひ聴いてみてください。

例えば

「まもなく電車が来ます。危ないので白線内にお下がりください」

というアナウンスがありますね。

まず、

「まもなく電車が来る」

という肝心なことを教えてくれています。

 そして

「危ないですから白線内にお下がりください」

と続きます。

もし感情が先走ってしまうと、

「危ない危ない。下がれ下がれ。」

と先に言うんです。

言われた人は、何が危ないのかとキョロキョロします。

肝心の「電車が来る」ことを言っていないんです。

私たちは肝心なことを言わずに、感情的なことを言ってしまいがちです。

だから相手になかなか伝わらないんですね。

 感情よりも、何があるのかという肝心なことをまず伝えるんです。

そうすれば、話の要を理解してもらえるので、誤解はなくなるんです。

断るときもそうですよ。

受け入れるときは何でもないんですけれども、断るときによく誤解が生じるときがあります。

皆さん、断るときにも「有り難う」と言ってください。

 以前、アナウンサー時代に、ある女優さんを空港まで迎えに行ったんです。

そしたら、その女優さんは両手に荷物でした。

一つは持たなきゃと思いまして

「お荷物をお持ちしますよ」

と申し出ました。

そしたらその方は、まずその気持ちを

「有り難う」

と受け入れてくれました。

そして次に、

「せっかくだけどこの荷物はね、私の責任なの。

だから最後まで自分で荷物を持つようにしてるのよ。

せっかくだけどごめんね」

と言ってくれました。

 私は最初

「有り難う」

と言ってくれたことに、なんと心遣いのある言葉だろうと思いました。

普通なら、

「自分の荷物は自分で持つから結構です」

と言います。

これだと

「せっかく持とうと思ったのに」

となりますよね。

まず、相手のその気持ちに「有り難う」と言って断るか、受け入れるようにしていただきたいと思います。

 お互いの気持ちを活かすために、伝えるために言葉はあるんです。

けなすためにあるのではないんです。

伝えるということは、誤解があったりして難しいかもしれません。

ですが、皆さんの日頃の気持ちがそのまま言葉になりますから、心のこもった言葉遣いをしてあげてほしいと思います。