なぜいま念仏か(1)7月(後期)

現代は科学の時代であると同時に迷信の時代でもあると述べました。

これは両者が足りない部分を補完しあって、互いに同じものを求めているからではないでしょうか。

人間にとって、求められるべき幸福な人生とは、ほぼ次の三点にまとめることができるのではないかと思います。

まず第一は、その人生が健康に恵まれ、豊かでたのしく充実したものであること。

第二は、人間としての正しさを失っていないこと。

そして第三は、その努力がその人にやすらぎを与えていること。

ところでこの三点を満たすために、科学と宗教が必要だとして、一体どちらが役立つのでしょうか。

かつては宗教であったかもしれませんが、現代は明らかに科学だといえます。

現代の文明社会に見る豊かさ、便利さ、快適さ、そういった人間の欲望を満たす楽しい人生は、まさしく科学によってもたらされたといえるからです。

人間にとって最も望まれることは、自由自在の生き方が出来ることです。

ところで、それが最大の願いだということは、私たちの人生は、実際は全く不自由な生き方しか出来ないからに他なりません。

そういった意味で、人間社会に生きる私たちは、苦悩の原因となるさまざまな事柄に、がんじがらめに縛られているのです。

だからこそ、人間は懸命にその繋縛されている要素の一つ一つを取り除くために努力しているのです。

そして現に科学の力は、病の苦しみ、自然からの脅威、人間社会の不平等性、貧困・醜さといった、人間の持っている苦痛の原因の多くを除くことに成功しているかのように思われます。