「お寺巡りとオイルマン人生」(上旬)全世界の資源量、残りあと半分か

======ご講師紹介======

淵脇哲朗さん(新日本石油基地株式会社代表取締役社長)

☆ 演題 「お寺巡りとオイルマン人生」

ご講師は、新日本石油基地株式会社代表取締役社長の淵脇哲朗さんです。

昭和22年、鹿児島県出水市生まれ。

昭和46年に京都大学法学部卒業。

同年6月より日本石油株式会社に入社。

その後、新日本石油基地株式会社常務などをへて、平成18年6月に同社の代表取締役社長に就任され、現在に至ります。

原油価格の高騰がいろいろな影響を及ぼしている今、石油を専門に取り扱われる淵脇さんの話される内容に興味を持たれます。

【新日本石油基地株式会社】

原油備蓄基地を運営する企業。

鹿児島市の喜入基地には、日本国内の石油使用量約2週間分に相当する735万キロリットルの原油が備蓄されています。

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さて、石油の話でございます。

石油の値段は、過去に何度も変動してきました。

昭和47〜49年のころ、いわゆるオイルショックと呼ばれることなどですね。

これは、要するに産油国が嫌な人には売らないと言って、蛇口を閉めてしまったということなんです。

その当時の日本には、我々のような油会社が適正在庫として持っていた民間備蓄の67日分しかありませんでした。

 それでは問題があるということで、国家備蓄基地を作って、民間と国家の両方で責任分担しようということになってため込んできました。

その結果、今は約180日分、つまり半年分ほどが備蓄されています。

これでやっと産油国と話ができるのです。

 それは

「あなた方が石油の供給をストップしても、私たちには半年分の蓄えがあるから大丈夫です。

値段上げてもいいですよ」

というようなことが言える立場になったということです。

ここまでなるにはかなりお金がかかっていますけど、国のエネルギー面の安全保障のためには、ここまでやる必要があったのです。

 それでも、石油がとれるところというのは、サウジアラビアを中心とする中近東などかなり地域が限定されますから、その国々への依存度はかなり高いです。

以前は78%、今では90%以上と大変なことになっています。

備蓄も増やしましたが、これだけ極端なまでに中東へ大きく依存している現状は非常な危うさをはらんでいるとも言えます。

 その次に値段です。

1バレルは159リットルなんですが、オイルショックの前は1バレル3ドルでした。

これが大騒ぎして値上がりして約12ドル。

それが今や7月現在で平均145ドルです。

それからガソリンの値段もオイルショック前は約114円でしたが、今年の7月現在では全国平均で約181円ですね。

本当に、すごいことになっています。

 ここで申し上げたいのは

「日本の石油は100%輸入に頼っている」

ということです。

ですから、今回は買えなかったではすまない訳です。

さらに産油国との取引は直接取引なんですが、全部長期契約だけなんです。

それで、もう値段は決まってしまっているんです。

つまり、安いのを買えばいいじゃないかと言われても、それは難しいということです。

ほとんどの場合は、値段交渉の余地がない中で買っているということをご理解下さい。

 値段というのは、普通であれば需要と供給のバランスで成り立つものですが、原油の場合、例えばイスラム過激派の活動などのリスクも原油の値段に反映されます。

本当の原油価格は需給のバランスだけであれば、60ドル強だと思います。

それにイスラム過激派の問題や、投機などの要因があって高くなってくということになります。

今では、石油というエネルギーは食料品などの生活部分まで大きく影響しています。

省エネを進めてコストを下げることが、そのまま環境対策にもなりますので、これに真剣に取り組まなければいけないのが石油業界の現状なんですね。

さて、全世界の資源量についてですが、今までに世界で発見された石油の半分を使っています。

それで残りはあと半分。

今発見されているペースですと、あと38年という数字が出ています。

ただ、これも他の国での消費量が日本並みに増えていけば、あっと言う間に減ります。

24〜25年になるという試算も出ています。

一方で、原油価格が上がってきますと、みんな石油離れが進んでいきますから、そうなると延びるということも考えられます。

ですから、今はあと38年くらいですが、いろんなことを勘案してあと30年くらいと覚えておくのがいいんじゃないでしょうか。