『親族が葬儀中に会葬者に挨拶するのは何故?』

 浄土真宗のお葬儀では、『正信偈』の始めの部分、

「五劫思惟之摂受」

と、導師が少し高めの音で発声するところからお焼香が始まります。

まず、遺族、親族と続き、会葬者の皆さまがその後に続いてお焼香という流れが一般的ではないでしょうか。

 近頃の傾向として、ご質問の通り、遺族の方のお焼香が終わると、そのまま着席せずに、今度は会葬者の方を向いて、お焼香に来る方々にお辞儀をしている光景を見かけることが多くなりました。

おそらく、葬儀屋さんの指導と思われますが、お参りいただいた皆さまへのお礼として、一見丁寧なようにも思えるかもしれませんが、厳粛な葬儀のさなか、読経中に荘厳壇(浄土真宗では祭壇とは呼びません)へ背を向けると言うことは、これは謹まなければなりません。

一人の人間の死に立ち会うにあたり、今生最後のこの瞬間、私が向き合うべきものは、今まさに目の前にある、生まれたら死ぬという真実でありましょう。

 お辞儀をするという行為そのものは何も悪くありません。

しかし、読経中の最中にするべきことではありません。

仏事の最中はしっかりと、ご遺体と、そして如来様と向き合い、そして、会葬者の皆さまへのお礼は、法要の一通り終わった後にじっくりと行えばよいでしょう。