「焼酎に魅せられて」(下旬)風土性が焼酎の価値を決める

だから、鹿児島の薩摩焼酎と言うときには、鹿児島のサツマイモを使わないと薩摩焼酎とは呼べないことになっています。

これは業界が決めて、国にも世界的にも認証を受けました。

それはなぜでしょうか。

以前、中国のサツマイモを使っているということが新聞などをにぎわせました。

サツマイモは非常にやっかいな原料で、害虫がいます。

そのため生では輸入できない原料ですから、蒸して、冷凍して持ってきます。

それが一時期使われたわけです。

ここで一番肝心なことは、風土性が失われるということなんです。

芋焼酎というのは、地域で作った農産物を、地域の人が働いて、そして何よりも地域の人が消費するという、地域循環型の産業構造を作っているわけです。

それが、鹿児島の焼酎文化を支えているんです。

おらが村の焼酎だとかですね、サツマイモへの愛着だとか、それがこの風土、地産地消、あるいはカライモと言わずサツマイモと呼ぶところ、そういうところが焼酎のいのちなんです。

このような意味で、焼酎のいのちは、アルコールではないんです。

焼酎のボトルを見ると、アルコール度数25パーセントと書いてあります。

では、残りは何かと言えば、水だと応えたら0点なんです。

残りが水だったらこれは甲類焼酎、単なるアルコールになってしまうんです。

アルコールプラスアルファの

「アルファ」

に当たるのが、焼酎のいのちなんです。

例えば、サツマイモのごくわずかな微量成分であったり、鹿児島が持っている風土性であったり、あるいは物語性であったり、あるいは歴史・文化であったり、そういうものすべてが焼酎のいのちになっているんです。

それを技術というものは、同じ原料を使って同じものを作ればいいだろうと思っています。

そうすると一番大事なものが失われていく。

そこのところが、焼酎が他のお酒とは違うところなんです。

どこでも作れる物というのは、やはり価値を失っていきます。

この土地ならではの物でないといけません。

風土というのは動かせないものです。

技術などはどこでも移転できますが、桜島は移転できないわけです。

風土とは、この鹿児島のシラス台地、この暑い気候、ここで取れるサツマイモなんです。

それはやはり動かしてはなりませんし、その風土性という価値を持った物を作っていかなければなりません。

そういうものが、やはり鹿児島の芋焼酎を支えてきているし、我々もその重要性を失わないようにしていかなければならないと思います。