「心無限の力」(下旬)心のエネルギー

ロイヤルホテルは、みんなの力で少しずつ再建してきました。

平成三年、私は稲盛和夫さんという方に巡り合うことが出来ました。

京セラという会社をお創りになられた方です。

その方が

「盛和塾」

という若手経営者の経営道場を平成二年に立ち上げておられました。

そこで

「女性も入れるのですか」

とお尋ねしたら、

「入れる」

とのことでしたので、稲盛さんの面接を受けて入れて頂きました。

稲森さんが、春と秋に鹿児島に来られて塾生を集めてお話をして下さるのです。

塾に最初に行った時は、緊張して席についていました。

お話の途中で

「赤字の会社はこの中にあるか」

と尋ねられたので返事をすると、

「その会社がなんで赤字か分かっているか。

社長がボロだからだ」

と言われたのです。

そして

「何がボロか分かっているか。

心がボロなんだよ」

とおっしゃったのです。

「経営は全て心だ」

と稲森は言われました。

「心を高めるから経営が伸びるんだ」

「心を高めれば赤字の会社も必ず黒字になる」

とも言われたのです。

そして、

「心を高めることは良きことを思うことだ」

と言われました。

こんな素晴しい命を頂いて、何と有り難いこと、お父さんお母さん有り難うと思えるだろう。

そして、いつも思いなさい。

このいただいた素晴しい命で我が成す業は世のため人のためとなる素晴しき業なりと、いつもいつも思いなさいと、その業を成すための家族に巡り会うことが出来た、有り難うございます。

どんな時でも、この良きことを思うことを忘れてはいかん。

このことだけを思えば、今日赤字の心の貧しい社長もきっと黒字になると言われたのです。

そんな簡単なことか、それなら私にも出来るとその時は思ったのですが、熾烈な経営の中で良きことを思うということはなかなか出来ないのです。

お金のこととか、嫌なことから思ってしまうのです。

それを良きように思う、そんなことは出来ないのです。

ところが、これは気がつくかつかないかなのです。

どんなに嫌なことがおきても、それを嫌だと思って受けるのか、そのことを良いことにしようと思って受けるのか。

同じ受けるのでも、全然違います。

だから、どんなに嫌なことがおきても、その日が晴れていたら、それだけで喜ぼうと、雨が降っていたら大地が潤うと思おうと、そう誓いました。

その頃から私は変わったと思います。

今こんな時代にあって、ロイヤルホテルは黒字体質です。

時代が悪くなるのに反して、利益がどんどん増えていったのです。

これは、この良きことを思うこと、即ち、感謝の心のお蔭だと思います。

心のエネルギーというものが一番大事だったのに、気がつかなかったために私は苦しんできました。

良きことを思うことは大変な努力を要します。

でも、必ず出来ます。

できないのは、本人がしないだけです。

エネルギーの出し方さえ気付くことが出来れば、誰でも出来るのです。

そして、そこからいろんなことが出来てくるのではないかと思います。