『報恩おかげさまありがとう』

今年の夏は、例年になく大変暑い夏でした。

なにか、つい最近まで口を開けば暑い暑いと言っていたように思いますが、気がつけばもう師走。

季節はあっという間に冬を迎え、温かい料理などが恋しくなる時節です。

聞くところによると、夏の暑さの影響で野菜の価格が高騰し、それが家計を圧迫して、容易に

「今夜はお鍋」

とはいかないとのことです。

夏の気候が、今の時期にまで影響を与えて、台所の内容にまで関係しているとは…。

仏教のことば(仏語)に

「重々無尽」

という言葉があります。

これは、あらゆるものが幾重にも重なり合い、網の目のように繋がって、どこまでも、どこまでも広がり存在し合っているということです。

私が、この世界のあらゆるもの(私、他者、様々な命あるもの、自然界のあらゆる事象)と、微妙に関係し合い、繋がっているということを改めて考えさせられます。

野菜を育てる農家の方々の苦労も大変なものだったことと思われます。

けれども、果たして、私たちはそのご苦労をどれだけ知っているでしょうか。

さて

「報恩」

という今月のことば。

「恩に報いる」

という意味ですが、これを平たく言えば

「おかげさまと頂き、ありがとうと生きぬかせて頂く」

ということになります。

前に述べましたように、お釈迦さまは、

「私たちはお互いに関係し合い存在している」

と言われました。

もちろん、その中で私たちは恩を受け、また与えていす。

しかし、人間は与えたものはいつまでも覚えているものですが、ともすれば自分にかけて頂いたご恩は忘れてしまいがちです。

そのため、時として

「あんなにしてやったのに…」

と、他人を謗(そし)ることもあったりします。

形に残るものであればまだ気づけますが、形として残らないものにはなかなか心が向かず、見過ごしてしまったりすることもあるようです。

一年の終わりに気付くのは、改めて様々なご恩の中に生かされてきた私の一年であったということです。

間もなく迎える新たな年を、

「おかげさま」

「ありがとう」

と味わいながら、一歩一歩、人生の歩みを進めて行たいものですね。