「在宅で過ごす人生最後の日々」(上旬)ガン以外で亡くなるのはもっと辛い

ご講師:馬見塚勝郎さん(医師・藤元総合病院在宅医療センター長)

どうして人間はガンになるんでしょうね。

ガンの遺伝子は誰でも持っているんです。

正常細胞の中にその遺伝子があるのですが、それが何かのきっかけでガンの細胞になろうとするスイッチが入るんですよ。

例えば煙草ですね。

煙草を1本吸ったからといって直ぐにガンになる訳ではないのですが、なるべくやめた方がいいですね。

継続して吸い続けると、悪影響があります。

ガン化には2段階あり、段階を踏んでガンになります。

実は僕らは気づかない程度で日々ガンになっているんですよ。

どういうことかと言うと、体の中の免疫細胞がガン細胞を食べるんですよ。

おそらく、僕は今日もガンになったと思います。

でも、アメーバみたいな細胞がそれを分解してくれます。

ただし、疲れや悩みで体力が落ちてるとき、ガン細胞を食べ損ねると、そのガン細胞が次から次に増えていくんです。

そして、本当のガンになる訳です。

ガンにはいろんな原因があります。

例えば、入れ歯が合わず、舌に継続的な刺激があれば舌ガンに繋がることがあります。

ですから、入れ歯が合わない人は必ず歯医者さんに行って処置してください。

また、突然変異というのもあります。

ガン遺伝子がある日、何かのきっかけで動き出すという場合があります。

例えば、骨髄性白血病ですね。

大きな火傷から皮膚ガンにつながることもあります。

それから内因性ですね。

日本人には胃ガンや肝臓ガンが多いんですよ。

欧米では乳ガン、前立腺ガンが多いですね。

あくまで統計学的なことですが、日本人は欧米人と比べるとご飯が好きですが、お漬物は塩分が多く含まれていますよね。

はっきりとした科学的根拠がある訳ではありませんが、塩分は胃によくありません。

子宮内膜ガン、乳ガン、前立腺ガンといったホルモンが原因でなるガンもあれば、ウイルス感染が原因でなる白血病に、肉腫、リンパ腫、それから子宮頸ガンがあります。

人間の死因としては、ガン以外にもいろいろあります。

例えば、心筋梗塞(しんきんこうそく)、それから肺炎ですね。

肺炎も誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)という、脳の力が弱まってうまく飲み込めなくなったことが原因で怒るものもあります。

病気以外では、交通事故や川や海での溺死、火事といった不慮の事故。

また自殺ですね。

医者をしていてガンの苦しみも当然分かります。

しかし、交通事故に遭って、救急車で僕のところに来たけども、もうなす術もなく亡くなるという方々を見てきました。

比べてはいけないかもしれませんが、ガンと宣告されて翌日亡くなる訳ではありません。

突発的な事故はさよならが言えないんですね。

家族に大至急電話しても、家族が駆け付ける前に亡くなっていかれます。

そう考えれば、まだガンはいいのかなあと思いますよ。

今、日本では年間で約120万人が亡くなりますが、その中でガンは約35万人です。

マスコミの話だけ聞くとほとんどガンで亡くなるような気がしますが、ガン以外で亡くなる人の方が多いんですね。

ガンだけが怖いかのようなイメージですが、心筋梗塞も怖いし、不慮の事故はもっと嫌ですよね。

家族に看取られる老衰が一番いいかなあと思います。