亡くなった方に「安らかにお眠りください」と声かけするのはどうしてですか?

お葬儀や訃報に接する際、「ご冥福をお祈りします」とともに半ば習慣としてよく聞く言葉ではないでしょうか。

安らかにお眠りくださいという言葉の背景として、一つには故人への生前のご苦労に対するねぎらいや感謝の思いでお伝えする一方、もう一つには、死への恐怖、あるいは幽霊や祟りといったことへの恐れや不安から、あの世で安らかに眠り、おとなしくしていてくださいという背景も含みつつ、これまで長い間使われてきていました。

また、冥福を祈るというのも、冥土での幸福を祈るという意味で、冥土とは迷いや苦しみの世界を意味しており、その迷いの世界での幸福を祈るという言葉の意味になるのです。

ですので、亡くなった方の行く先を勝手に冥界と私たちが決めつけているのですから、亡くなられた方やご遺族に対して配慮を欠いた言葉だと知らねばなりません。

仏教は成仏教、すなわち仏に成る教えです。

命の縁尽きると共に仏様とならせていただくことを大きな願いとしています。

浄土真宗の教えの上では、亡き人は浄土へと生まれ往き悟りの身となられて、そこでゆっくり眠っているのではなく、われわれを真実の世界へと導かんがためにはたらいてくださるのです。

ですから「安らかにお眠りください」ではなく「お浄土よりお導き下さい」という表現になるのです。

言葉には大切な意味が含まれています。

一つひとつの言葉を慎重にそして大切に味わいながら使わせていただきたいものです。