「新しい世界遺産と南九州の焼酎」(1/4)世界史的に意義のある「明治日本の産業革命」

ご講師:田村 省三さん(株式会社島津興業常務取締役・ 尚古集成館 館長)

昨年、磯地区等の史蹟が「世界文化遺産」に登録されました。

すでに「屋久島」が「世界自然遺産」に登録されていますので、鹿児島県は、日本で唯一「世界自然遺産」と「世界文化遺産」の二つを持つ自治体となりました。

今回の世界遺産は「明治日本の産業革命遺産」というタイトルになっていますが、大変分かりにくいです。

それは、非常に範囲が広いからです。

8県にわたる23の遺産を一つのストーリーで結んでいるのです。

こういうのを「シリアルノミネーション」といいまして、日本の様々な世界遺産の中で、こういう取り組みは初めてでした。

したがって、広範囲に散らばっていること、もう一つは「産業遺産」は、説明しないと分からないのです。

決してきれいなものだけでなく、明治時代に輸入された機械などが「世界遺産ですよ」となる訳ですから、何のためこの機械が導入されて、どのようなものが造られて、どのように使われていたのかというようなことを説明する必要があるのです。

つまり「明治日本の産業革命遺産」は、人から人に、言葉で伝えていかなければ、なかなか理解しにくいものなのです。

さて、世界遺産ということですから、どういう意義があるのかということですが、日本の伝統的技術と西洋技術を融合させたということが重要なポイントです。

当時、日本は鎖国中でしたので西洋の技術を西洋人から直接に習うことはできず、日本の伝統技術を使って西洋技術を獲得しようとしました。

ここが、世界各地の近代化とは事情が異なった点です。

また、遺産の中に炭鉱がありますが、日本の石炭は日本の近代化に貢献したばかりでなく、世界の国々の船舶にも供給し、世界的な海運に貢献しました。

開国して、世界中と交流できるようになると、半世紀ほどの短期間で近代化を達成しました。

このことが、世界史的にみて意義があることなのです。