~世界を旅して~

私の趣味は旅行です。

年に一度、勤めているお寺の住職、ご門徒さんなど多くの方に無理をいって一カ月程旅にでます。

旅と言いましてもバカンスのような楽しい旅行とは少し違います。

大きなバック一つ背負って、あてもなく安宿を回る、バックパッカーといわれる旅です。

これまでもたくさんの国を回らせていただきました。

東南アジアを回り、アメリカを横断して南米を旅しました。

そしてこの5月半ばから6月末にかけてアフリカのケニア・エチオピアを一カ月旅しました。

旅で心がけていることは、なるべくお金をかけない事。

地元の人が使う交通手段で移動し、地元に溶け込んでいる一泊数百円の安い宿に泊まる。

食べる物も現地の人が食べるものを食べる。

時には現地の人に泊めてもらう。

もちろん危険な事は山ほどありましたが、その方が現地の方と深く触れ合うことができ、現地の人の生活を体験できるのです。

そんな旅の中での印象に残っている出来事の一つを書かせていたこうと思います。

アフリカのエチオピアを旅していた時の事です。

私は現地ツアーに申し込んでダナキル砂漠という場所へ向かっていました。

その途中に立ち寄った、名前もわからない田舎町での出来事です。

昼過ぎにその町に到着し、今日はこの町に泊まるからとガイドに言われ、古いゲストハウスに荷物をおろしました。

荷物を置いた私はゲストハウスを出て町へ散策に行きました。

田舎ならではの、のどかで温かみのある町です。

町の規模から考えて人口は三千人くらいでしょうか。

その近くの空き地でボールを蹴っている子どもたちを見つけて、私は木陰に座ってみていました。

小学生から中学生くらいでしょうか。

ボールは、ごみを集めてそれをテープでぐるぐる巻きにしたものでした。

このあたりではよく見る光景です。

みんな楽しそうに追いかけています。

すると一人の男の子が私に気付き寄ってきます。

アフリカの多くの子どもたちは私を見ると「金をくれる人」「食べ物をくれ」と言ってきます、だからまた子どもたちに囲まれて「金くれ」「食べ物くれ」と言われるのかと思いましたが、そこの子どもたちは意外な物を欲しがりました。

それは「サッカーボール」でした。

「サッカーボールをくれ」と私に言ってきました。

公園の近くの売店に、日本でも使われているような綺麗なサッカーボールが500円程で売られていました。

私は基本的に「お金をくれ」、「食べ物をくれ」と言われても、あげないようにしています。

しかし今回はサッカーボール。

「どうしよう、どうしよう」と悩みました。

これほどまで悩むのには理由がありました。

私は小学生から大学までサッカーをして、当時は一応プロを目指して頑張っていました。

だから旅に出て街でサッカーしているのを見かけたら飛び入り参加して、いろんな場所で友達を作ってきました。

私にとって世界中の人と仲良くなるツールがサッカーボールです。

それに、まがりなりにもサッカーのすばらしさ、楽しさを知っているつもりですので、サッカーの楽しさを伝えたい思いもありました。

だから私は買ってあげることにしました。

近くの売店でサッカーボールを買って、子どもたちにポーンと蹴って渡しました。

「本当のサッカーボールはこんなにバウンドするんだ。」

「こんなに飛んでいくんだ。」

「こんなに転がるんだ。」

「サッカーってこんなに楽しいんだ。」

と、喜んでくれると思ったのですが、そんな期待は裏切られました。

始まったものは、サッカーボールをめぐる殴り合いの喧嘩でした。

子どもたち全員で乱闘です。

後々考えたら予想できたことだったようにも思います。

しかし、サッカーボールが争いの発端になるのは、とても悲しいでした。

良かれと思ってやったことが、逆に問題を引き起こすことがよくあります。

特に発展途上国では…。

綺麗なサッカーボールより、ゴミをまとめてテープでぐるぐるまきにして作ったサッカーボールの方が、子どもたちを幸せにしていたのでした。

【確認事項】このページは、鹿児島教区の若手僧侶が「日頃考えていることやご門徒の方々にお伝えしたいことを発表する場がほしい」との要望を受けて鹿児島教区懇談会が提供しているスペースです。したがって、掲載内容がそのまま鹿児島教区懇談会の総意ではないことを付記しておきます。