さつまの真宗禁教史6月(前期)

出水郷における一向宗徒の摘発―その4―

前回にひき続き「出水に於ける一向宗禁制史料」(『日本庶民生活史料集成』第十八巻所収)を意訳して一向宗徒探索の様子と門徒の動向を見ていきます。

● 一向宗徒は胸替(宗旨替)の誓詞を提出したあとも以前と変わることなく肥後の寺に密かに参詣する者もあるとの噂があり、下記の三人を出張させて、肥後国の真宗寺院に参詣する者を見屈けさせました。

そこで左記の報告がありました。

(上申書)

隠横目 衆中三人

税所市郎左衛門

石塚弥七兵衛

吉留政右衛門

わたくしたち三人、八月ごろ信者を装い肥後国水俣に潜入し往来する人物に注目していましたが一向宗徒の通行者はいませんでした。

そこで西念寺(水俣市平町)という一向宗の寺に見物人をよそおって潜入したところ、薩摩の人間が三人参詣していました。

わたくしたちに気づき奥座敷に逃げたので、名前は確認できませんでした。

このように薩摩の人間がひそかに寺に参詣していることは間違いありません。