日本では、少し前までは知らない人が多かったのに、年々盛り上がりを見せているのが「ハロウィン」ではないかと思います。
秋になると、多くのお店ではハロウィンの飾り付けが施され、お菓子だけでなく日用品もハロウィンをイメージしたパッケージに変わるなど、さまざまな関連グッズが売られています。
10数年前、まだハロウィンという言葉をあまり耳にすることのなかった頃、夏が過ぎると花屋や雑貨屋にオレンジ色のかぼちゃのバケツや飾りが並ぶのを見て、「ハロウィンとは、どのように過ごす行事なんだろう」とか、「ハロウィンって、何月何日にあるんだろう」などと思ったりしていました。
その時は、かぼちゃ繋がりで、何となく日本の冬至みたいな日なのかな、と思っていました。
それから数年後の10月末、私は偶然東京の渋谷にいました。
夕方、駅から出てくる人たちがキャラクターの被り物をしていたり、魔女のような容姿に真っ黒な衣装を着た人が電車に乗っていたりするのを目にしました。
近年、毎年ニュースで取り上げられているような、大勢の仮装をした人が行き交うような状況に比べると、まだ数は少なかったのですが、当時鹿児島では見たことのない日本式仮装大会といったハロウィンの様子に、「特別なものを見ることができたな」と思った記憶があります。
ハロウィンとは、毎年10月31日に行われる古代ケルト人が起源と考えられている祭りのことで、もともとは秋の収穫を祝い、悪霊などを追い出す宗教的な意味あいの行事でした。
現代では、特にアメリカで民間行事として定着していますが、祝祭本来の宗教的な意味合いはほとんどなくなり、魔除けの風習が転じて子どもたちがお化けの仮装をして家々を練り歩き、お菓子をもらうといったスタイルが定番となっています。
ハロウィンではありませんが、私の近所にも似たような風習が残っています。
ハロウィンのように仮装をするわけではありませんが、冬に地域の子どもたちが、夜に集まって、歌をうたいながら家々を回って歩き、その訪ねた家の人から頂き物をして、最後に子どもたちみんなで分け合って帰って行くという行事が、一年に一度行われます。
昔は、何か所もの地域で行われていましたが、今では私の知る限り一か所だけで継承されています。
地域の風習や季節の行事も大切だなと思います。
私が小さい頃は、どの地域の広場にも土俵が作ってありました。
その土俵で、秋の十五夜の日にススキを飾り、子どもたちの相撲大会が行われていました。
男の子も女の子も相撲をとり、応援の歓声が飛び交う賑やかな大会でした。
相撲は、一対一の試合なので、周りの注目を浴びることからくる緊張感と、恥ずかしかった気持ちは今でも少し心に残っています。
今年、十五夜の日にバスの中でススキを手にして乗っておられる方を見かけました。
とても季節感が感じられて、「いいな」と思いながらその姿を見ていました。
私の家の隣近所には、空き地や草原があるので、ススキを見るのは特に珍しいことではありません。
そのため、わざわざ十五夜だからとススキをとってきて家に飾ることはありませんでした。
でも、季節が移り変わるたびに、その季節ならではの装いをして迎えることで、昔から人々が味わってきた風情を感じることができるのだと思います。
時代が移り変わる中で、いろいろなことが次々と廃れていく今の時代にあって、ずっと続いてきた風習を、たとえ細々ではあっても誰かが続けていくことが、また次の世代の人々の心の中に、いくつになっても忘れ難い大切な思い出を心に残すことに繋がっていくのだといえます。