「人生の答え・本当の安心」

======ご講師紹介======

宮崎幸枝さん(みやざきホスピタル副院長)

☆ 演題 「人生の答え・本当の安心」−医療現場の念仏者たち−

宮崎幸枝さんは、茨城県にあります、みやざきホスピタル副院長をお務めです。

東京生まれの宮崎さんは、みやざきホスピタル副院長として小児科で患者さんのお世話をされる一方、理事長として病院経営もしておられます。

また、宮崎さんご自身、熱心な聞法者であられ、お忙しい中、東京の築地本願寺や、時には京都まで足を運んでおられます。

そして「患者さんに仏法を」と、病院内に聴聞の場を設置、月数回の聞法会を開催しておられます。

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−医療現場の念仏者たち−(上旬)ものすごい形相

平成九年のお正月に、生まれて初めて本当に嬉しい年賀状を頂きました。

それは「あけましておめでとうございます」のあとに、

「人間に生まれさせていただいて、本当によかったと思えるようになりました。

有り難うございました」

と書いてあったんです。

「人間に生まれて本当によかったと思える」、

これなんですね。

ここに到達したというんです。

それは前の年、平成八年十二月十三日のことを書いているんです。

トミちゃんという、うちの看護士さんなんですけど、その日彼女は重症室の受け持ちでした。

この重症室には戸田さんという男性の患者さんがいらっしゃったんです。

七年ぐらい前に胃ガンの全摘出をされましたが、肺にも転移していて重症室で酸素吸入をしていたんです。

その日の十日ぐらい前、私が戸田さんのところで

「今度は治らないかもしれませんよね」

と言ったら、

「そう」

と当たり前のようにおっしゃいました。

この方はずっと精神分裂病で長く闘病生活をしておられました。

そのとき精神症状はなく

「戸田さんの命が今終わったとしても、これでおしまいじゃないよね」

と言いますと、

「うん」

と言うんですね。

そして、しばらく阿弥陀さまのお話を二人でしました。

ところが、その十二月十三日の日は、戸田さんが重症室に入ってそれどころじゃない。

私が行くと、戸田さんはペッドに寝ていました。

よく見ると、彼の耳がものすごく紫色なんです。

これはかなりの酸欠だなと思いました。

そばに行くとものすごい形相で眉間にしわを寄せ、ぎらぎらした目で人をにらんでるんです。

トミちゃんから、戸田さんは最悪の状態だということを聞きました。

戸田さんがあんまり不安そうな顔をするので、どこが一番苦しいのか聞きました。

戸田さんは「全部」と言いましたね。

「何が一番不安ですか」「全部」。

それ以外のことは何も言いようがありません。

全部苦しくて、全部不安なんです。

そのとき自然に阿弥陀さまのお話が、まるでこの前の続きのように出てきました。

「お念仏はね、

『私を頼りにしておくれ。

必ずあなたを浄土に迎えるよ』

という阿弥陀さまの声なのよ。

今、戸田さんは阿弥陀さまに抱っこされているから心配ないよね」

と言うと、

「うん」

と答えるんです。

「戸田さん、お浄土があってよかったね」

「うん」

「阿弥陀さまと一緒だから心配いらないよね」

「うん」「戸田さん、お念仏しましょう」

って言ったら、今までギュッと寄せていた眉間のしわが、パッととれたんです。

びっくりしてアレッと思いましたら、そこに満面の笑顔が現れたんです。

そして、

「ナムアミダブツ。先生、有り難う」

っておっしゃいました。

そのとき、もっとビックリすることが起こったんです。

今まで点滴を見ていたトミちゃんが、いきなり戸田さんの枕元に走り寄って

「戸田さん良かったね、安心できて良かったね」

って叫ぶんです。

 びっくりしてトミちゃんの顔を見ると、大きな目に涙がいっぱいたまっていました。

トミちゃんは点滴を見ながら聞いていたんです。