愛しい人ともいつかはお別れをしなければならない時が、必ずきます。
頭の中では理解できるのですが、いざそのお別れの場になりますと悲しみのあまり、その事実をすぐには受け止めることのできないのが我々の姿ではないでしょうか。
そういう私たちが、節目に行う年忌法要によって、そのお別れの事実を少しずつしっかりと受け止めながら、亡き人を偲びつつ、私自身が教えに出遇っていく大切なご縁の場が年忌法要なのです。
年忌法要は、1周忌、3回忌、7回忌、13回忌、17回忌、25回忌、33回忌、50回忌と続いていきます。
13回忌頃までは、しっかり憶えていても、25回忌、33回忌ともなりますとついうっかりということもあります。
私がお預かりしているお寺のご門徒さんの中でも、数年前にこういうことがありました。
あるご門徒さんが
「実は昨年が33回忌だったのですが、ついうっかりしていました。親戚に言われて気づきました。1年遅れになりますが、33回忌をお願いしたいのですが。大丈夫ですか?」
と仰いました。
私は、
「大丈夫ですよ。1年遅れましたが、年忌法要をお勤めし、故人を偲び、親戚の方々が集まり、仏さまの教えに触れるご縁ができたことは尊いことでありますよ。」
とお伝えしました。
「ご法事は引き寄せてするのはいいけれども、遅らせてはいけない」
という言葉を耳にすることがあります。
これは、大切な故人のご法事を忘れることなくしっかりとお勤めしなさいという先達の方々の戒めの言葉であると味わうことです。
ですから、故人の祥月命日当日にお勤めできない場合は、命日の1週間前でも1週間後でも多くの人が集まりやすい日を決めて、所属の寺院にご相談されていただきたいと思います。
うっかり忘れてしまっていた場合でも気づいたその時に所属の寺院に相談してお勤めいただくことが大切なことではないでしょうか。
ご法事は先にお浄土へ生まれ往かれた方が私たちのために命がけで設けて下さった大切な法縁であります。
少し遅れたとしてもそのご縁をいただくことが肝要であると受け止めていただければと思うことです。