「ご恩送り」いただいた「御恩」のおすそわけ

9月に入り、厳しい残暑の中にも微かな秋の気配を感じます。9月といえば、お彼岸の月になります。今日は「ご恩送り」という言葉について、お話しさせていただきます。

私たちは普段、自分一人で生きているような気持ちになりがちですが、実は目に見えない多くの方々のご恩に支えられています。朝起きて飲む一杯のお茶も、お米一粒も、数え切れない人の手を経て私たちの元に届いています。

「ご恩送り」とは、いただいた恩を直接その人にお返しするのではなく、別の誰かに送ることです。電車で席を譲ってもらった方に直接お返しはできませんが、今度は自分が困っている人に手を差し伸べる。そんな温かい心の循環です。

お彼岸は、ご先祖さまへの感謝とともに、私たちが今ここに生かされていることへの気づきの時でもあります。阿弥陀さまの無条件の慈悲も、私たちに何かを求めているのではありません。ただただ、その温かさを受け取り、日々の暮らしの中で少しずつ、周りの方々に「おすそわけ」していく。それが私たちにできる、ささやかな恩送りなのかもしれません。

南無阿弥陀仏、お念仏の慶びもおすそわけしていきたいものです。