「大きくなったら何になりたい?」
問いかけると、さきを争うようにして「恐竜ジャー!」「仮面ライダーガイム!」「プリキュア!」など、アニメのヒーロー・ヒロインの名前をあげる子ども達の姿は、何とも微笑ましいものです。
もちろん、成長するにしたがって「なりたいもの」は、より現実味をおびてくるのでしょうが、人は「なりたい自分」があるからこそ、一生懸命勉強したりさまざまな努力を重ねていけるのです。
しかし、すべての人がなりたい自分になれる訳ではありません。
なりたい自分になれなくて涙を流したり、ひどい挫折感を味わうこともあるでしょう。
でも、たとえなりたい自分になれなくても、なりたい自分になるために努力を重ねてきたそのことは得難い宝として体に刻み込まれています。
それが、次のステップにつながる大きな力となっていくのです。
今さかんにいわれる「自己肯定感」を持つとは、そういうことではないでしょうか。
それは、思うようにならなくて自分を否定しそうになった時でも、そこにそのまま沈みこんでしまうのではなく、そこから立ちあがって再び歩きだすことのできる、何らかの前向きの力が自身の中ではたらいていることを自覚できることをいうのだと思います。
それは先ほど述べたように、失敗を恐れずに挑戦したり努力したりする中で養われるのでしょう。
そしてもうひとつ、そんな自分を見守り認め励ましてくれる人がいてくれることが重要です。
それらがあれば、どんな辛いことや苦しいことがあっても、きっと乗り越えていけるに違いありません。
お経の中に「無有代者(むうたいしゃ=かわるものあることなし)」という言葉があります。
「あなたはあなただけ。世界中探してもあなたの代わりはどこにもいない。絶対に代わることのできないかけがえのない存在、それがあなただよ」
と、仏さまは全面的に私を肯定して下さっています。
失敗も挫折も欠点も、人生で起きることの全てが私を私にしていく大切なご縁です。
それらを受け入れることが、「私が私でよかった」と思えること、「かけがえのない存在としての私を生きていく」ということではないでしょうか。