浄土真宗の宗祖、親鸞さまの代表的なお書物『教行信証』の冒頭は、次のような一節から始まります。

『つつしんで、浄土真宗すなわち浄土真実の法をうかがうと、如来より二種の相が回向されるのである。一つには、私たちが浄土に往生し成仏するという往相が回向されるのであり、二つには、さらに迷いの世界に還って衆生を救うという還相が回向されるのである。』（現代語訳）

私たちは、その生涯を終え、命終わる時、お浄土に仏様として生まれさせていただき、今度はまたその浄土から、仏としてこの娑婆世界に還ってきて、後の人々を浄土へと導くはたらきをさせていただく、というのが、まず浄土真宗の信仰の要であります。

しかし、大切な方のご遺骨をお墓に納めたのでありますから、そこに間違いなく遺骨は存在しますし、私たちの抱く素直の感情として、いつまでもここが故人を偲ぶ場であり、大切な空間であることは当然の心理です。

ここで私たちが大切に心がけたいことは、悲しみや別れの辛さだけで終わらせてはならないということです。

まさに今、亡き方を通じて仏縁を結ばせていただき、後に残る私たち一人ひとりが手を合わせ、お念仏申す身にお育てをいただくことが大事であります。

「その人は去っても、その人の温もりは消えない。

その人は去っても、その人の言葉は消えない。

その人は去っても、その人の思い出は消えない。

亡き方は、拝むその手の中に、いつでも還ってくる。」

ある和上さまが詠まれた詩です。

この問いへの答えとして、亡くなられた方はお墓の中ではなく、仏様としてお浄土に生まれ、今私たちの手を合わす身となり、お念仏申す声となり、私たちを浄土へと導く尊い仏様として、いつでもどこでも私と共におられるのではないでしょうか。