「AI(=artificial intelligence)」すなわち「人工知能」とは、人工的にコンピュータ上などで人間と同様の知能を実現させようという試みや、それに関する一連の基礎技術を指す言葉です。
当初の人工知能は、膨大な知識やルールなどを人間がすべて教える必要があり、現実の社会において通用するレベルにはほど遠いものでした。
けれども研究が重ねられた結果、最近の人工知能は「機械学習」、具体的にはコンピュータ自らがルールを学んでいく技術が中心となってきたため大きく進歩しています。
中でも大量のデータから自分で物事を分類するルール(特徴量)を見つけ出す「ディープラーニング(深層学習)」といわれる技術により能力が飛躍的に向上したことから、多くの場面において活用されるようになってきています。
よく人工知能を搭載したコンピュータとチェス・囲碁・将棋のプロとの対戦が話題になります。
当初は人間の側に軍配が上がっていたのですが、次第に勝敗は拮抗するようになり、近年はコンピュータの方に分があるようになってきました。
これらのことからも、人工知能の進化の度合いが窺い知られます。
全般的に見れば、今はまだプログラミングする人間の方が優位にありますが、2045年には人工知能が人知を超えるシンギュラリティー(特異点)を迎えるといわれます。
シンギュラリティーが訪れると、
- 人工知能の方が人間よりも賢くなる
- 人工知能が人間の代わりに研究や技術開発を行う
- 人間の脳を完全にデジタル化できるようになる
- 医学の進歩により人間を不老不死にできる
- 人間の仕事が人工知能に奪われてしまう
といったような良い点と悪い点が表れると考えられています。
人工知能を具現化したものの代表としてロボットがあります。
がこれまでロボットの活躍は映画の中の仮想現実であったものが、次第に現実のものとなりつつあります。
その一つが、中国・北京にある龍泉寺で公開された僧侶ロボットのシエンアルです。
このロボットは、人工知能の専門家によって作られたもので、周囲の状況を把握したり、来寺した人からの仏教に対する質問に答えたりすることができるのだそうです。
この龍泉寺は、10世紀に創建された由緒正しい寺院だったのですが、1966年に始まった文化大革命によって閉鎖に追い込まれました。
それが、近年ようやく再建され、特にIT業界関係者の間で知名度を上げています。
それは、この寺院の僧侶の多くが現役のプログラマーや数学者で、修行をしながら研究や開発を行っているからです。
同寺院のシュエチョン師は、仏教が生き残るためには、僧侶が寺院に閉じこもってお経を唱えるだけでなく、現代的なツールを活用して積極的な情報発信をすることが必要だと考えたのだそうです。
そこで、優秀な研究者や技術者を僧侶として集め、寺院のIT化を進め、経典を読むためのiPadなどの最新設備を導入し、寺院のウェブサイトや僧侶によるプログも開設して情報発信に努めました。
その成果があり、オンライン上には、龍泉寺のフォロワーが数万人もいるのだそうです。
そのような中、寺院のITチームが開発したのが、身長60cmのロボット僧シエンアルです。
AIを搭載したシエンアルは、お経を唱えることができる他、来寺した人からの質問にも答えてくれるそうです。
確かに、多くの人びとの悩みとそれに対する仏教の教えに基づく説法をデータ化すれば、それを搭載した人工知能ロボット僧侶は、問いかけた人の悩みを即座に解決したり、苦しみを癒したりすることができるかもしれません。
いつの時代にあっても、人間の煩悩が生み出す苦悩が尽きることはありません。
予測では、今から30年足らずで人工知能の方が人間を凌駕してしまうそうですが、その時には、医療の面では精密なデータを搭載したロボットが精緻な技術を駆使して手術を行い人間のいのちを救ったり、宗教の面では膨大なデータを備蓄したロボットが人びとの苦悩に耳を傾け、経典や高僧の教えに基づいて明確な方向性を示し、心を癒したり生きる勇気を与えてくれるようになったりするようになるのでしょうか。