十二月、師走を迎え、何かと気忙しい毎日をお過ごしのことと存じます。江戸時代の俳人、小林一茶にこんな一句があります。
「ともかくも あなたまかせの 年の暮れ」
この句を現代語に訳すと「この一年、さまざまのことがあったが、あれこれ考えたところでどうにもならない。今となってはすべてを阿弥陀如来様にお任せして、年の暮れを迎えることにしよう。」となります。作者の小林一茶は、この句が詠まれた年の6月に愛娘を天然痘という病気で亡くしています。恐ろしい病気の娘を看病しながら、親として精一杯のことをしたあげたことは容易に想像できます。
しかし、我が子は亡くなってしまった。その年に詠んだ句がこの句でした。
一茶の句が持つ「おまかせ」の心は、自分の力でできる限りやった結果、どうすることもできなかったことから生まれるものかもしれません。しかし、そもそも人の生き死ににおいて、私たちが自分でできることがどれほどあるのでしょうか。一茶は愛娘の死という厳しい現実の中にあって、私のこのままをまかせていけるはたらきがあると実感されたのではないでしょうか。それは「自分の力で何もかも解決できる」という思い込みを手放し、初めから阿弥陀様の大きな慈悲の心に、自分のすべてを委ねていく生き方を指します。
これは、決して投げやりな諦めではありません。むしろ、「私が何とかしなければ」と自分一人で背負い込み、不安や焦りに苛まれる生き方からの解放です。「あなたの人生、あなたの苦しみも悲しみも、すべてこの私が引き受け、決して見捨てはしない」と呼びかけ続けてくださる阿弥陀様がいらっしゃる。その大きな呼び声を聞き、「はい、おまかせします」と頷かせていただくところに生まれる、絶対的な「安心感」なのです。
慌ただしい年の暮れ。私たちはつい、自分の力だけで物事を片付けようと、肩に力が入ってしまいがちです。しかし、私たちの力には限りがあります。思うようにいかないことも、どうにもならないこともたくさんあります。
そんな時こそ、この一句を思い出してみてはいかがでしょうか。ただ「どうにでもなれ」と開き直るのではなく、「大きな仏様が、すべてをご存じで、引き受けてくださっている」と、その温かい眼差しに我が身を委ねてみる。そうすれば、焦りや不安が、きっと穏やかな感謝の気持ちへと変わっていくことでしょう。
「阿弥陀さま、今年も一年ありがとうございました。来年もまた、あなたにおまかせの一年を大切に生きていきます。」と、心安らかな年の瀬をお過ごしいただきたいと存じます。
