「幸せを増やすために放送したい」(上旬) 千人が座り込む

======ご講師紹介======

山縣由美子さん(MBC南日本放送ニュースキャスター)

☆ 演題 「幸せを増やすために放送したい」

3月のご講師葉、MBC南日本放送ニュースキャスターの山縣由美子さんです。山縣さんは山口千穂県のお生まれで、現在は「MBC経済フラッシュ」のキャスターや「MBCニューズナウ」でのレポート、報道特別番組のキャスターやディレクターなどを務めておられます。

2003年には「小さな町の大きな挑戦−ダイオキシンと向き合った川辺町の六年−」で、本格的なテレビドキュメンタリー制作を経験されました。

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今から十年前、環境問題というものに関心を持ち始めました。

なぜ興味を持ったかといいますと、私は父の仕事の関係で、とても転校が多かったんです。

それで、各地を転々としてきたということもあって、一つの所でじっくり何かを積み重ねてやりたいという思いがとても強かったからです。

もう一つあります。

その転校の経験のお蔭で、私はいろんな土地を知ることが出来ました。

それで鹿児島だけに限らず、県外の方や、出来れば世界の方も協力して話し合い、県境や国境を越えられるような自分のテーマを一つ持ってみたいという気持ちがあったんです。

 環境問題、これに関係のない人は世界中一人もいません。

世界共通の大事なテーマです。

そうなりますと、例えば私が鹿児島で取材したことが、もしかしたら世界の人の役に立つ可能性もあるという夢を感じたんですね。

ただ、環境問題に縁が出来て嫌だったこともあります。

 それは環境を巡ることには、対立の話がとても多いということです。

何か環境汚染の問題があったときには、よく行政対住民とか、ある企業対住民の構図で、その汚染の責任を押しつけ合ったり、情報を隠したりしています。

頭の中では、誰もが大事な問題だと思っていながら、それなら自分はどうかというと、皆バラバラです。

だから、なかなか解決しないんです。

 以前取材したことに、ゴミ処分場の建設反対の問題がありました。

全国各地で起きていました。

それは必ずトラブルのニュースなんです。

あるとき私が取材に行った所は、産業廃棄物処分場の建設に反対ということで、住民の方々も千人も座り込んでいらっしゃいました。

その方々は、特にご高齢の方が多いでした。

 自分の子や孫、そして自分の故郷のためにも、そんなものを絶対に作らせないように、寒い中を頑張っていらっしゃった訳です。

そのお気持ちもよくわかりました。

それと同時に、そこで対立している相手の姿も毎日ニュースで流されます。

でも、その相手の方々は建設業の末端の方な訳です。

 仮に処分場が出来たとしても、そこに運び込まれるゴミは、その人たちが出す訳じゃないんです。

もしかしたら、それは私たちが出すゴミかもしれないし、大きな企業が出すゴミが運ばれて来るのかもしれません。

だから私は、そこで対立している激しいエネルギーにむなしさを感じてしまうんですね。

 これでは一向に解決しません。

初めは、私たちもそういう現場に取材に出かけて、その日のトップニュースとして報道していました。

ですが、そういうことを繰り返していくうちに、私たちが伝えていることは、本当に問題解決の役に立つのだろうかと考え始めました。