『唯、念仏 弥陀の手の中』

今月が終わると、新しい年がやってきます。

毎年思うことなのですが、年の暮れが近付くと1年間というのはこんなにも足早に過ぎ去るものかと驚いてしまいます。

そんな中、振り返ってみますと、今年もまた色々な方々との出会いがありました。

その中で特に印象に残っているのは、癌と闘病中のさなか、よくお寺参りをして下さる一人の女性との語らいです。

この方は、今年初めの検診で癌であることが判明し、抗がん剤による治療を選択され、現在も療養中です。

抗がん剤の治療のない期間は自宅に帰って来られ、お寺にもお参りにきて下さいます。

とても有り難い方で、お勤め間も常にお念仏の声がこぼれでています。

そしてお勤めが終わると、その度ごとに現在の自分の体調等を話してくださいます。

おそらく、精神的にも肉体的にもつらいはずなのに、苦しいそぶりひとつ見せず、淡々と今の状況を話される姿を見て、もし自分が同じ状況だったら、こんなふうに振る舞えるだろうか。

多分うろたえておろおろするばかりではなかろうかと思うことです。

よくよくお話を聞かせて頂くと、この方のお母さんもまた、お念仏を大変に喜ばれた方であったとのことで、小さい頃からお母さんに手を引かれてよくお寺にお参りされていたそうです。

そのお母さんが「苦しい時も、悲しい時も、嬉しい時も阿弥陀さまはあなたといつも一緒だよ。

常にあなたを支え・護り続けて下さっている。

だから何の心配もいらない。

頂いたいのちを精一杯生き尽くしなさい」と常々言われていたそうです。

お念仏申す人生の中において、阿弥陀さまのおはたらきの中で生かされている自分であったといううなずきがあったればこそ、どんな状況の中にあっても、その一つひとつの事実を真正面から引き受け、そして生き抜いていける力強さを持ち得ることが出来ておられるのだと思うことです。

この女性のお姿を通しながら、私自身もまたともにお念仏申す身とさせて頂いていることを慶ばせて頂くことです。