(2008年7月掲載分の続きから)
深夜1時にコルカタに到着した我々一行。
タクシー運転手の常識はずれな言動を目の当たりにしながらもようやくタクシーへと移動。
しかしそこに停まっていたのは、いかにも殿堂入りしそうな往年のクラッシックカーさながらのタクシーでした。
それを見て
「ちゃんと走るのか?」
みんなが同じ気持ちを抱いていました。
アニメの
「ルパン三世」
をご存知の方も多いかと思うのですが、例えて言うならば、あの中に出てくるルパン達が乗っている今にも壊れそうな黄色いポンコツ車を想像していただければ分かりやすいかもしれません。
後で調べてみたところ、その車は
「アンバサダー」
というれっきとしたインドを代表する国産車だそうで、昔からモデルチェンジもせず、今も昔と変わらないデザインで活躍中なのだそうです。
しかし、それはそうとどう考えても五人は乗れそうにはありません。
しかも、大小の違いはあるにせよ、みんな大きなバックパックを背負っています。
トランクには三つしか入りきらず、あとは車内に…。
といっても車内にももう既に大の大人が助手席に一人、そして狭い後部座席には四人座り、一人は抱っこされている状態。
そこへ残った二つのバックパックが詰め込まれてきます。
定員オーバーなのは言うまでもなく、重たいバックパックの分まで入れると、明らかに重量オーバーなことは一目瞭然です。
それでも運転手は
「ノープロブレム」
と繰り返しながら、ちゃんと閉まるのかどうかも分からないようなドアをようやく閉めました。
車内は男同士の肌と肌が密着し、身動き一つ取れないままの状態の中、重たそうにタクシーは発車したのでした。
「ギシギシ」
と至る所が擦れに擦れ、物凄い音を立てながら…。
これまでアジアの国々を旅していると、単車の4人乗りや5人乗りや、トラックの荷台からバスの屋根に至るまで人が溢れんばかりに乗車している光景を、当たり前のようによく目にします。
私には危なっかしくて、とてもそのような真似は出来ませんが、それでも子どもからお年寄りまで、みんな器用に乗りこなしているのです。
警察官もいますが、それを見ても全く取り締まろうとしません。
現地の人に
「定員とか決まってないのか?」
と聞いてみたところ、何とも
「らしい」
という答えが返ってきました。
「(定員は)乗れるだけさ」(笑)
そう、ここはインド。
外国人だろうが旅行者だろうが、この
「乗れるだけ」
は適用され、私たちも郷に入れば郷にしたがえです。
しかしそのことよりも、この車がその
「乗れるだけ」
に対処しきれているかどうかということの方が、全員の抱く最大の不安でした。
きしむ音は止むことを知らず、メーターの類は一定を指すどころか、車の振動に合わすように針はあっちを指したりこっちを指したり。
タイヤ、ドア、その他いろんな物はいつ外れてもおかしくはない状況の中、それさえも凌ぐ凄まじいコルカタの夜の光景が、やがて私の目に飛び込んできたのでした。
(インドコルカタ編つづく〜次回は7月掲載予定)