「念仏の教えと現代」11月(前期)

 国際化・情報化・技術化(社会化)ということが現代社会で求められるとして、この点に非常に優れた、いわばこれの能力を全て身につけた人間が育てられたとします。

では、はたして現実社会においては、その人々によってどのようなことが引き起こされているのでしょうか。

 これは、今日の政局がまさにそれを象徴しているといえます。

あらゆる情報を集め、あらゆるデータを分析して、多くの人達がこれが最高の選択だと判断して実践した結果、どのようなことがもたらされているかというと、いわゆる想定外のことが大半です。

また、判断を下して人が、本当に思い描いた通りの正しい道を歩むことができたかということになると、結局その人の前にはすべて不確かな道しか現れて来なかったということになるのではないでしょうか。

 これが、人間社会の実際の状態なのです。

もし私たちが、過去において起きた問題を取り扱うのであれば、人間がどのような道順を歩んできたか、それをデータ化し分析して、その善し悪しを正しく判断することは十分に可能だといえます。

そしてその資料をもとに、未来に対して一番良い方向を作り出していくことも、ある程度可能だと思われます。

 ただし、いざすべての準備が完全に出来たとして、そこで未来に向かっていま一歩を踏み出そうとするその瞬間、今まで備えてきた準備の全てが、はたして完全に正しいのかどうかということになりますと、それが完全に正しいとわかる人は誰もいないのです。

これが、つまるところ人間の能力の限界であり、心であり姿だということになるのではないかと思われます。