知らないことを知らない

先日お会いした方が「最近、高い音が聞こえづらくなってきました」とおっしゃいました。

体温計の音、携帯電話の鳴る音に気付にくくなってきたのだそうです。

私たちは、年齢を重ねるごとに聞こえなくなっていく音域が広がっていくのだそうです。

モスキート音(あまり聞き心地の良い音ではありませんが…)と呼ばれる高い音域は、だいた20歳代までで聞こえなくなってしまうといわれます。

ところで、生き物によって聞くことの出来る音域は様々なのだです。

以前、水族館に行った時に「イルカは私たちの耳には無音のようにしか感じられない超音波領域の高い音を聞くことができる」という説明がありました。

だから、イルカは仲間同士で識別可能な何十種類もの音を使って、海の中でコミュニケーションをとっているということでした。

偶然の出来事かもしれませんが、昨年犬の散歩をしていた時、普段はゆっくり立ち止まって景色を見たりすることなく、ひたすら歩き続けて散歩を終えているのですが、その日は犬が木の隙間からじっと海を見て動こうとしませんでした。

「何を見ているんだろう」と気になって、犬と同じ高さに目線を合わせてみると、イルカの群れが泳いでいました。

海でイルカの群れを見ると、自然界にいるだけに泳ぐ姿には迫力がり感動を覚えます。

イルカの群れが目の前を通る前から、海を見つめ続けていた我が家の犬には、もしかするとイルカの群れが遥か彼方から泳いでくる音が聞こえていたのかもしれません。

イルカの発する音が犬には聞こえていたのかどうか定かではありませんが、そうだと思わせるようなタイミングの良さでした。

後にも先にもそのようなことはないだけに、とても不思議な出来事でした。

私たちは、ふとしたことがきっかけで新たな気付きや発見をしたり、あるいはそれが心に残る感動的な出来事につながったり、また別の事を考えるきっかけになっていくのだと思いました。

そう思うと、私たちの身の回りには、見えているようで見えていないことがたくさんあるのではないかという気がしました。

そういう意味では、何でも分かったつもりになっていて「知らないことを知らない」でいたのかな、ということに気付いた不思議な体験でした。

【確認事項】このページは、鹿児島教区の若手僧侶が「日頃考えていることやご門徒の方々にお伝えしたいことを発表する場がほしい」との要望を受けて鹿児島教区懇談会が提供しているスペースです。したがって、掲載内容がそのまま鹿児島教区懇談会の総意ではないことを付記しておきます。