「米軍基地とわたし」(上旬)変化する安全保障の概念

ご講師:屋良 朝博 さん(フリーランスライター、沖縄国際大学非常勤講師)

 最近、この世の中は荒れているような気がしませんか。

バングラデイシュのダッカで起きたテロ事件やアメリカで警官が黒人を射殺する事件が相次ぎ、それに対しての暴動が起きてしまうなど、どうしてこのようになってしまったのでしょうか。

日本の周辺にもいろいろときな臭いことがあり、そのために軍事が見直され、憲法改正まで問題になるような状況になっています。

今後のことを考えると、実に暗澹たる思いがいたします。

 1990年初頭からポスト冷戦の状況です。

冷戦時代は軍事力が全面に出て、東と西、敵味方に分かれて対立し、この地球を何度も破壊し得るような核爆弾を保有していて、東側も西側も身動きがとれない状態でした。

しかし、そんな世界規模の戦争の時代というのは終わって、人類が目指したのは平和の配当です。

人びとの生活をどういうふうに豊かにしていくかということを実行してきたのです。

 ところが、経済状況が悪くなったことも背景にありますが、最近どうも多くの国家が内向きになっています。

アメリカの大統領選挙でも共和党候補のトランプ氏は「アメリカを再び偉大に国にする」と宣言しています。

わが国の安倍首相も一期目は「美しい国」をキーワードにしていましたが、今期は「日本を取り戻せ」と声高に言っています。

 とこからどのように取り戻すのかよく穂からないのですが、そういうふうに「国家」というものを全面に出しているのが気になります。

 本来、冷戦終了後は、安全保障の面でも国家というバリアをどんどん低くしていって、人と人とのつながり、ものの行き来、お金のやり取り、文化交流などを活発にして、お互いの疑心暗鬼、憎しみ、わだかまり、そういうものを取り除いていこうという機運になっていました。

 ところが近年、歴史を逆行しているのではないかと気になります。

ヘイトスピーチもあります。

東京で若者による反中反韓の行為が特に醜いのですが、ヘイトスピーチは沖縄にも向けられています。

その内容はやはり、基地問題です。

「国家のために沖縄が基地を抱えているのは当然だろう。なんでいつも反対ばかりしているのだ。アメリカ軍は出て行けというのはヘイトスピーチだ」

などと、言いがかりをつけられています。

 昨今、沖縄に向けられている悪口や誹謗中傷が沖縄の若者の間に浸透するという大きな問題があります。

例えば、沖縄には基地があるからお金が入るとか、翁長知事は中国から資金が出ているとか、飛行場ができたから人びとが集まってきたなどというような多くのデマが広まっていて、それを若者たちが鵜呑みにしてしまうのです。

 だから今、本当のことを彼らに伝えないと大変なことになってしまうという危機感を感じた大学の先生方が集まって『それってどうなの?沖縄の基地の話』という冊子を作りました。

1冊100円です、購入しやすいこともあり、超ベストセラーになっています。