ご講師:川村 妙慶 さん
アナウンサーとして学んだ「伝える」ということについて、お話したいと思います。
この伝えるということは難しいことです。
「聞く」ということが大切なのはもちろんですが、やっぱり自分の思いを伝えないとどうにもならないです。
じゃあ伝えるというのはどういうことかといいますと、それはやっぱり「言葉」なんです。
言葉というのは「こころの遣い」という意味なんです。
技術ではないんです。
そして、アナウンサーはいわば言葉のプロですから、言葉づかいについては、人生で一番得をしています。
でも、心で思ったことがそのまま言葉になるんです。
「そんな意味で言ったんじゃないのよ」と一生懸命に否定される方もいますが、日頃から思っている言葉がポロッと出るんです。
だから「こころの遣い」といいます。
それから、言葉というのはキッャチボールです。
言葉というボールを、相手の胸の中にそのまま投げてやって下さい。
その中でも使ってはいけない言葉はあります。
「きつい言葉」と「イヤミな言葉」です。
きつい言葉は相手を傷つけてしまいます。
言った方はスカッとするんですよ。
ボールでも強く投げれば、投げた方はスカッとします。
でも受け取った方はそのきつさが残ります。
ボールでも、壁にきつく投げると跳ね返ります。
それと同じように、きつい言葉を投げると、必ず相手から跳ね返ってきます。
せっかくなら、相手の胸にちゃんと届く言葉を投げてあげてほしいんです。
だから気をつけていただきたいのは、本当のことを言うと、人を傷つける場合があるということです。
正直なことを言えばいいというものでもないんですよ。
今、熟年離婚が話題になっているのは、皆さんご存知だと思います。
弁護士の先生が言われるには、熟年離婚は言葉が原因であることが多いそうです。
言葉がきっかけで「もうあんたとはやっていけん」ということになって、別れる方が多いという話です。
それには代表的なものが三つあるんだそうです。
あるとき、ご主人が仕事から帰って来ました。
奥さんは、夕食の準備が間に合わず、スーパーのお惣菜を買って、とりあえず器に盛りつけなきゃいけないと移してたんだそうです。
その現場をご主人が見ました。
そのとき、ご主人はひと言「お前、俺が仕事から疲れて帰って来たのに、この程度の料理しか作れんのか」と、見たままを言ったそうです。
そしたら奥さんが、やっぱりそのきつい言葉に対して言い返す訳です。
「私だってね、今まで会合やらなんやらで忙しかったのよ。なんでそんな言葉しか言えんのよ」とケンカになって、「もうあんたとはやっていけん」となるそうです。