「ご法義地」と呼ばれる場所で育った私は、たくさんのありがたいご門徒さんたちにお育ていただきました。
今でも私の耳に残るお念仏の声があります。
本堂に入ると真っ先に阿弥陀様の正面に座り、本堂全体に響くような大きな声で「なんまんだぶ、なんまんだぶ」とお念仏される。
「小さいころから仏さんにお育ていただいた」と、会うといつもニコニコと嬉しそうな顔で話してくれる腰のまがったおじちゃん。
その大きなお念仏の声で、姿を見なくても「あ、おじちゃんだ」と安心することができます。
いつもご法話を一番前で、前のめりでお聴聞し、ご法座の後はとっても嬉しそうで幸せそうな顔をしておられます。
「おじちゃん、元気やったね?」と声をかけると、私の手を握って「あなたも元気やったね。よかったよかった。私たちは同士やけんね、お浄土仲間やけんね」といつもお話してくださいました。
実家を離れる数か月前、久しぶりにおじちゃんを見かけました。
杖をつき体を支えられて一番前の席に座り、大きな声でお念仏される。
ずいぶん弱られた様子だったが、離れたところに座っていた私にもよく聞こえる力強いお念仏の声でした。
ご法座の後、声をかけるとまた嬉しそうに「お浄土仲間やけんね。同士やけんね。またお浄土で会いましょうね。嬉しかねえ。」と涙を流して、ぎゅっと手を握ってくださいました。
しばらくして、おじちゃんはご往生されました。
今でもしっかりと私の耳に残るお念仏の声と、涙を流してご縁を喜ばれるおじちゃんの姿を時々思い出しては、「またお浄土で会えるから…」と、懐かしんだり呟いたりしています。