審判の判定

4月24日のプロ野球、オリックス対ロッテ戦で、ロッテが3点リードしていた2回、2死1塁の場面。ロッテの佐々木朗希投手投じた外角ストレートがボールの判定になり、この間に1塁走者が盗塁を決めました。その直後、突然球審がマウンド上の佐々木投手に詰め寄りました。その時は、捕手が間に入って球審をなだめるような行動をとったこともあり、大きなトラブルにまではいたりませんでしたが、試合終了後から球審がマウンドに詰め寄ったことが物議を醸しました。

その時の投球を改めて動画サイトで確かめてみると、素人目にはストライクにも見えるきわどいコースでした。また、このとき佐々木投手はストライクと思いマウンドを降りかけたのですが、投球がボールと判定され、しかも盗塁までされてしまったので苦笑いをしていました。なお、ネット上では苦笑いしているときの口の動きを「うそ~」と言ったのではないかという推測が、字幕付きで紹介されていました。

この件に関して、プロ野球選手のOBやファン等から賛否両論が渦巻きましたが、私も中学時代野球部に所属していたり、社会人になってからも20年余り軟式野球チームで投手をしたりしていたので、その時のことがいろいろと思い出されました。

最近プロ野球では、アウト・セーフの判定について疑問を覚えた場合、2回失敗するまでは監督がリクエストをしてビデオによる再検証をしてもらえるようになりましたが、依然としてストライク・ボールについては審判の判定が絶対で、リクエストもできなければ、判定がくつがえることもありません。そのため、佐々木投手も大きな動作や面と向かって球審の判定に抗議をしたわけではなかったので、なぜ球審がいきなりマウンドに詰め寄ったのか、不思議で仕方がありませんでした。ネット上でも、球審は何か注意したいことがあるのであれば、イニングの交替の時にでも言えばよかったのではないかという声が少なからず見られました。

ところで、私の場合、ストライク・ボールの判定については、コースよりも高低で一喜一憂していました。コースについては、ボールがホームベース上を通過しているかどうかがポイントなので、あまり不服を感じるようなことはなかったのですが、高低の方は、同じ高さに投げても打者の身長によってストライク・ボールの判定が変わります。

テレビのプロ野球の試合は投手目線で放映されるので、自分が試合で投げている時と同じ感覚で見ることができます。そのとき気になったのは、やはりコースよりも高低です。地元の軟式野球連盟の審判のストライクゾーンは、プロ野球の審判の判定よりも概ねボール3個分くらい低かったよう思います。チームを結成して地区大会に出場し始めた頃はその違いが分らず、テレビを見ていて「ストライク」と判定される高さを投げても、ほとんどボールと判定されてしまうので、試合中困惑することがよくありました。その一方、投じた私だけでなく打者も「低い」と思って見送った高さを「スイライク」と判定されたこともありました。そのときは、思わず振り向いて「うそ~」とつぶやいたことを覚えています。佐々木投手の場合は、ストライクと思った投球をボールと判定されての「うそ~」ですが、私は反対にボールと思った投球がストライクだったので、ほくそ笑みながらの「うそ~」でした。こういった経験から、おそらく佐々木投手の「うそ~」は、審判への抗議ではなく、思っていたことと違った時、無意識に発する「うそ~」ではなかったかと思っています。

また、自分が打席に立った時、2ストライクと追い込まれていたのですが、自分が投げているときには間違いなくボールと判定される高さだったので、当然「高い」と判断して自信をもって見送ったボールを「ストライク!!」と判定されるということがありました。その直後、無言だったのですが、内心「うそ」と叫びながら思わず審判のほうに顔を向けていました。そして、心の中では「うそ」のあとに「私がこの高さに投げたら絶対ボールと判定するのに、どうしてこれがストライク? おかしくない?」 とつぶやいていました。

その時の私を客観的に描写すると、「自信をもって見送ったボールをストライクと判定され、驚きの表情で審判に首を向けた」ということになるのではないかと思います。ところが、ベンチから見ると、どうもそのようには見えてはいなかったようです。私は右打者で、その日のチームのベンチは1塁側だったこともあり、正面から私の様子をよく見ることができていたのですが、三振をしてベンチに戻ると、後輩から「今のあの態度はまずいですよ」と言われました。理由を尋ねると、審判に対して「今のがストライクか!?」と、判定に抗議しているように見えたというのです。

自分では、「投げているときは絶対にボールと言われる高さなので自信をもって見送ったのに、ストライクと判定されて思わず審判の方を見てしまった」ということなのですが、ベンチからはあからさまに抗議をしていると見えたようなのです。

テレビでプロ野球の解説を聞いていると、この審判はストライクゾーンが狭いとか、メジャー・リーグは日本に比べると外角のストライクソーンが広いとか、審判によって判定の基準が様々だということが話題になったり、投手はその日の審判の特徴を把握し、それに応じた投球をすることが大切だということも語られたりします。

今回の詰め寄り騒動を見ながら、審判の判定に一喜一憂したことを思い出し、人間のすることだからいろんなこともあるが、でもだから野球は面白いんだなと、改めて思ったことでした。

【確認事項】このページは、鹿児島教区の若手僧侶が「日頃考えていることやご門徒の方々にお伝えしたいことを発表する場がほしい」との要望を受けて鹿児島教区懇談会が提供しているスペースです。したがって、掲載内容がそのまま鹿児島教区懇談会の総意ではないことを付記しておきます。