======ご講師紹介======
観山正見さん(国立天文台台長)
☆ 演題「大宇宙と三千大千世界」
ご講師は、国立天文台台長の観山正見(みやましょうけん)さんです。
観山さんは、天文学者にして、浄土真宗本願寺派の僧侶でもあられます。
昭和26年、広島県生まれ。
広島大学附属中学校・高等学校卒業後、京都大学理学部に進み、京大理学部物理学科天体核物理研究室で学ばれました。
ご専門は、理論天文学。
とりわけ恒星及び惑星系の形成過程。
国立天文台助教授、教授、副台長を経て、平成17年に国立天文台台帳に就任。
著書に「太陽系外の惑星に生命を探せ」などがあります。
実家は、室町時代から15代続く広島県東広島市にある浄土真宗本願寺派の長安寺。
ご自身も本願寺派の僧侶でいらっしゃいます。
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まず
「太陽系」
のことからお話しましょう。
地球や月は内側の惑星なのですが、ずいぶん小さいです。
水星、金星、地球、火星、これらは岩石質のものです。
そして外側には、大きな木星や土星、さらにその外側に天王星や海王星があります。
最後の二つは氷の惑星で、ほとんど水から出来ています。
これが一番基本となる星の単位です。
その次が
「銀河」
です。
例えば、地球から230万光年離れているアンドロメダ銀河ですが、その中には1000億個の星があります。
では、銀河はどうやって出来るのか、渦巻き銀河の形成を例にしてみましょう。
銀河は、小さな星の集まりがぶつかりながら、だんだん合体して大きくなっていきます。
星々は、互いに万有引力がありますので、集結してきて取り込まれてしまい、次第に大きな銀河に成長していくのです。
成長するにしたがって回転する能力がつき、我々の銀河と同じように平べったい構造になり、渦を巻くようになります。
こうして銀河全体が出来るのに、大体1億年くらいかかります。
このように、星というのは宇宙の中にばらばらで広がっている訳ではなく、銀河という仲間を作っています。
つまり、宇宙は階層を作っていて、その階層の単位が銀河なのです。
そして、その銀河も
「銀河団」
という集団を作っています。
銀河団がたくさんある所と、ほとんどない所があります。
これを宇宙の大規模構造というのです。
我々に見える範囲の137億光年の中には、銀河は幾つあるのかというと、実は1千億個の銀河があります。
そして、その約1千億個の銀河には、それぞれ1千億個の星があります。
まさに、宇宙には本当に星の数だけ星があるということなのです。
さて、このような宇宙の階層性は、実は演題にもしました
「三千大千世界」
という仏教の中の宇宙観と非常によく似ているのです。
ご門徒の方は『阿弥陀経』というお経を読んでみて下さい。
お経の後ろの方に、6回
「三千大千世界」
と出てきます。
この
「三千」
というのは、千が3つという意味の三千ではありません。
まず
「一世界」
という基本の単位があります。
そこには架空の山なのですが、須弥山という山があります。
そして、そこを中心に九山八海、つまり9つの山と8つの海が広がっています。
これに月と太陽が加わってできているのが、一世界だと言われています。
一世界が千個集まったものを
「小千世界」
と言います。
その小千世界が千個集まったものを
「中千世界」
そして中千世界が千個集まったものを
「大千世界」
と言い、この階層の全体像を三千大千世界と呼ぶのです。
ここで先ほどのお話をちょっと思い出してみましょう。
言ってみれば、この一世界がお星さまということです。
数は違いますが、この一世界が千個集まった小千世界と呼ばれるものが銀河にあたると思うのです。
中千世界が銀河の集まりだとすると、銀河団にあたるということでしょうか。
そしてこの大千世界というのが、銀河団のネットワークのある大規模構造という宇宙です。
西洋の考え方では、このような階層性はなく、宇宙はただずっと広くて、星々がただずっとあるという捉え方なんです。
もちろんお釈迦さまが生まれた頃に、宇宙の大構造といったことが分かっていた訳ではありませんが、仏教における宇宙の捉え方は、なかなか面白いなと思っています。