「夢追って生きる」(下旬) 患者さんの目から見て日本一の病院に

6年前の夏、私は病気で倒れました。

でもそれがきっかけで、私の人生はいい意味で変われたと思っています。

平成14年の1月に私は鹿児島大学病院の医長になって、そこでストレス性の痛風発作が起りました。

当時の病院長というのは本当に激務で、このときは本当に疲労困憊(ひろうこんぱい)で倒れたわけです。

入院していたその4カ月間にいろんな人生観の変化がありました。

そのときに私が考えたのは、やっぱり自分が病気になったら何にもならないなということでした。

患者さんにも迷惑をかけましたからね。

だから、自分と一番近しい家族や患者さん、教室の若者たちや学生たち、そして自分自身の健康に出来るだけ時間を割いて、忙しく走り回らず、ゆっくり時間をかけていくような生き方をしようと思ったんです。

それで昔から描きたかった絵を描き始めました。

痛風の患者として、痛風に関する本も出しました。

今後も、いろんな病気を患者さんの立場から見たらこうだという本を書いていこうと思っています。

それからホームページも作って、定年退職後も皆さんの教育に携われたらなということを考えています。

最後に、今の財団法人慈愛会に来てからどんな夢追いをしているかということについてお話しようと思います。

私は、慈愛会の会長とし

「患者さんの目から見て日本一の病院に」

ということを、全職員の耳にタコが出来るほど言っています。

規模で日本一なんて掲げても聖路加病院には絶対勝てません。

しかし患者さんの目から見て日本一だったら私たちなら絶対にできる、実現するぞ、やってやろうと掲げているんです。

そして、最新の設備と快適な空間、充実した医療体制の整備というようなことを進めることで、この

「患者さんの目から見て日本一に」

という私の夢は着々と実現しつつあります。

人のいのちは有限でも、誰もが必ず死を迎えます。

私もあと何年生きられるかわかりませんし、認知症にならない保証もどこにもありません。

ですから、頭がしっかりした状態での人生はもっと短いかもしれないんです。

それでも残された人生の期間を、自分自身の健康に留意しながら、何か周りの方の役に立てることはないかを探しながら、夢追いを続けていきたいということが、私の夢でございます。