ここからまた、天文台の話に戻ります。
天文台は、実は皆さんの暮らしとすごく関係していることを二つしています。
その一つはお彼岸です。
秋分・春分はお彼岸の中日で、仏教にとっては重要な日ですね。
この秋分・春分の日は誰が決めていると思いますか。
これは、天文台が決めているのです。
天文台は暦の決定をしています。
秋分や春分は、太陽が真東から昇って真西に沈むわけですから、太陽と地球の位置関係で決めるのであり、天文学的なことなのです。
それからもう一つ。
中央標準時という
「時」
これも日本の法律では天文台が決めることになっています。
そもそも、時というのは原子時計といって、原子の刻む間隔である定義がなされています。
時は東経135度の明石で、12時に太陽が真南を通るように決めてあります。
ですからこれも天文学なのです。
実は平成20年は、12月31日の最後に1秒を1個多く入れることになっています。
これは原子時計で長く数えていますと、段々と地球の動きがずれてきたので、1秒入れて調整することになったのです。
このように、皆さんのカレンダーには天文台が絡んでいるのです。
さて、宇宙の話に戻りますが、大宇宙の中での我々の存在というのは、なんと小さな存在であるか、今までの話でお分かりいただけたかと思います。
ただ生命が生まれるだけならわりと簡単ですが、人間のように知性のある生命として進化するまでには、ものすごく時間がかかっています。
そういう意味で、人間というのは貴重な存在なのです。
宇宙はどこも同じであり、どこでも平等というのは宇宙の真理でもありますが、星にもそれぞれ違いがあるように、我々もそれぞれの個性は大事にしたいものです。
よく天文台に勤めていると
「ロマンがあっていいですね」
と言われるのですが、実際にしていることは、来年の予算はどうしようとか、あの人とあの人はどうして仲が悪いんだろうとか、悩みは同じなんですよ。
だけど、宇宙は広くて、こういう大きな世界の中に我々がいるのだと思うと、人間の考えることは小さなことです。
小さなことであまりくよくよせず、明日の人生をしっかりと生きていただければと思います。
大きな力に包まれているのですから。