亡き方の愛用品や好きだった食べ物を副葬品(ふくそうひん)と言うんだそうです。日本では亡くなられた方は火葬をしなくてはいけないので、火葬の際には棺桶と一緒に火葬をするため、棺に入れていい物とダメな物があるんでそうです。
入れてはダメなものにはまず理由があります。
- 火葬設備故障の原因となるもの
- 公害発生の原因となるもの
- 燃焼の妨げになるもの
- 遺骨損傷の原因となるもの
と、いった具合に逆にいうと上記以外のものは基本的には何でも入れていい、ということになりますので、代表的なものとしては、『お花・好きだった食べ物(少量)・思い出の物(燃える・燃えやすい物)・お手紙・寄せ書き』などがあるようです。
浄土真宗門徒の場合は、同じ浄土真宗であっても地方によって若干異なる物があるようですが、多くの地方で、出棺前に「納棺尊号(のうかんそんごう)」というお名号(みょうごう)を書いた紙を棺に入れます。
これは、浄土真宗の礼拝の対象が阿弥陀如来であるためです。
葬儀場では、葬場勤行を行う際には、正面にご本尊(絵像または名号)をおかけして行います。しかし、葬儀が済んで遺体を火葬場へ運ぶ時、さらに火葬場に着いてからは、ご本尊がない場合がほとんどです。つまり、そうした改めてご本尊をかける機会がない場合に、棺の中のお名号が礼拝の対象になるわけです。
葬儀後に、火葬場にむけて出棺する際には、いわゆる霊柩車に棺を載せてお見送りを致しますが、この時、合掌礼拝します。遺体に手を合わせているようですが、実はそこには「納棺尊号」が置かれてあり、如来様に合掌している形になっているのです。
火葬場に到着するとすぐに棺を窯に入れ、礼拝読経が行われます(火屋勤行)。このときも窯の中の遺体にではなく「納棺尊号」に礼拝していることになります。
私たちは、故人との縁が深ければ深いほどその遺体への未練を断つことがむずかしくなります。故人への思いが募るほどに故人の遺体へ目が向いてしまいます。大切な方へのおもいを考えると、それはむしろ自然な姿だとおもいます。
しかし、遺体に目が向きがちな私たちのために、遺体とともに、お名号がしっかりと置かれてある。それは、阿弥陀様がいつでもどこでもおいでになり、私たちに寄り添ってくださっておられる。お姿をとおして、そのことに気づかしめようとされているのです。
ともあれ、棺の中には遺体とともにお名号を納め、また火葬にそぐわないもの以外は一緒に納棺していただき、大切な方をおもい、偲びながら、亡き方がであわせてくださった命がけの尊いみ教えを大切に味わいたいものです。