2020年4月法話 『耕心田 心を耕す教えを聞こう』(後期)

カー用品販売業、イエローハットの創始者、鍵山秀三郎さんは「無心に掃除をすれぎ、人は磨かれる」を指針として40年以上にわたり毎日会社のトイレ、営業車の清掃をしてきた方だそうです。

貧しい生活の中でも、人に迷惑をかけることを恥とし、人に嫌な思いをさせない暮らしをモットーとする両親に育てられ、身の回りをきれいにすることが自然と身に付いたとのことです。

「父は、“人間の心は見ているものに似ていく”と、よく言っていました。周りを汚くしておくと、心も次第に汚れていきます。周りにゴミがあっても平気でいるのは、心の中もゴミだらけということです。

職場も車もいつもきれいに掃除するようになったのは、この父の言葉が原点です。

貧しくてもつましく、すがすがしく暮らすことによって生み出された日本人の心のありようについても両親に教えられました。」

と、述懐されています。

お釈迦さまのお弟子の一人に、掃除だけで悟りを開いた周利槃特(シュリハンドク)という方がおられます。自分の名前さえ忘れてしまうほど愚かであったシュリハンドクは、いつも仲間からバカにされることを恥じ、自分の愚かさを嘆き、お釈迦さまのもとを訪ねます。

するとお釈迦さまは、「自分を愚かと知っているものは愚かではない。自分を賢いと思いあがっている者が、本当の愚か者である。お前は、ただ大好きな掃除をしながら、“塵(ちり)をはらい、垢(あか)をのぞかん”と毎日唱えるだけでよい」と、教えられました。

シュリハンドクは、お釈迦さまの教えを守り、箒を手に掃除にいそしみながら、1年、5年、10年、20年とひたすらお釈迦さまに教えていただいた言葉を唱え続け、ついに一切の心の汚れや曇りを取り除き悟りを開いたと伝えられています。

いろいろな物はいっぱいあふれていても、心の中身は殺伐とした貧しい生き方をしているのが現代人の姿ではないでしょうか。

今一度、心を耕す仏教に耳を傾けてみませんか…。