「喋っているうちに秘密にしていることまでうっかり口にすること」や、「問い詰められても口外しない秘密事項を何事かを喋らせられることによって何気なく漏らしてしまうこと」を「語るに落ちる」といいます。
また、似たような言葉に「隠していたものが現れること」や「今まで隠していた物事の正体が、なんらかのきっかけで暴かれてしまうこと」を「馬脚を現す」といいます。「馬脚を現す」の由来・語源は「芝居」にあります。「馬脚」とは本来「芝居の中で馬の脚を演じる役者」を意味する言葉で、足を演じる役者がうっかりと姿を現してしまったことから、「隠していたものが現れること」という意味で使われるようになりました。
ところで、9月25日に開かれた自民党の内閣第一部会などの合同会議で、杉田水脈衆院議員が女性への暴力や性犯罪に関し「女性はいくらでもうそをつけますから」という発言をしました。これは、明らかに被害者を蔑視する発言であることから、杉田氏に対して会議の後、記者団から発言の真意が問われたのですが、杉田氏は「そんなことは言っていない」と、発言のあっことを否定しました。ところが、会議に参加した複数の関係者から、杉田氏が蔑視発言をしたことが確認されました。
杉田氏は、会議で来年度予算の概算要求を受け、女性への性暴力に対する相談事業について、民間委託ではなく、警察が積極的に関与するよう主張し、その中で被害女性が虚偽申告をするかのような発言をしたのですが、その端的なものが「女性はいくらでもうそをつけますから」という発言でした。
実は、杉田氏がこのような発言をしたのは初めてのことではなく、これまでも性暴力被害を公表したジャーナリストの伊藤詩織氏を中傷するツイートに対し、何度も“いいね”をしたり、そのことによって中傷を煽ったりしてきました。
また、杉田氏は18年6月に放送されたBBCの番組「Japan’s Secret Shame(日本の秘められた恥)」で、伊藤氏について「彼女の場合は、あきらかに女として落度がありますよね。男性の前でそれだけ飲んで記憶をなくして」 「社会に出てきて女性として働いているのであれば、嫌な人からも声をかけられるし、それをきっちり断るのもスキルの1つ」 と語り、さらに伊藤氏が「嘘の主張をした」ために山口氏とその家族が脅迫された、と彼女を非難していました。
当初、杉田氏は発言を否定していましたが、その後自身のブログで「改めて関係者から当時の私の発言を精査しましたところ(中略)ご指摘の発言があったことを確認しました」と発言のあったことを認めました。 その上で、「警察組織の女性の活用なども含めて暴力対策を行っていく議論が必要だということであり、女性を蔑視する意図はまったくございません」「ただ、民間団体の女性代表者の例を念頭に置いた話の中で、うそをつくのは性別に限らないことなのに、ご指摘の発言で女性のみがうそをつくかのような印象を与えご不快な思いをさせてしまった方にはおわび申し上げます」と陳謝しました。
けれども、2019年4月に始まった性暴力に抗議する社会運動『フラワーデモ』の主催者からは「被害者への謝罪になっていない」という厳しい批判が上がり、杉田氏に発言撤回、謝罪、辞職を求めるオンライン署名を『change.org』で実施され、2020年10月中旬の時点で130,000人以上の賛同者が集まっています。また、デモの呼びかけ人の一人で作家の北原みのり氏は「当初は発言を否定し、最後は『人を傷つけるような意図はなかった』とするやり方は、今までも繰り返されてきたごまかしの典型だと批判しています。
杉田氏は、「女性はいくらでもうそをつけますから」という発言をした後、まさに自らそれを証明するかのように「そんな発言はしていない」と平然とうそをつきました。その後、多くの非難を浴びた上に自民党内の議員からも批判が出たことを受けて謝罪しましたが、本当に心から反省して詫びたのかというと、これまで問題発言を繰り返し行ってきたことから「いくらでもうそをつけますから」という言葉を自ら積極的に実践しているのではないかと思えて仕方がありません。
なお、杉田氏は自身が女性であるため「女性は…」と述べたのかもしれませんが、やはりこの言葉の主語は「女性」ではなく「私」とすべきだったと言えます。つまり、「私はいくらでもうそをつけますから」と。
今回の蔑視発言を通して、「語るに落ちる」とはこんなことをいうんだろうなと改めて思ったことでした。