コロナ禍後の社会

地球規模での感染症のパンデミックは、社会の仕組みを大きく変えました。まさに時代や歴史の転換期を今、迎えているような気さえします。これまでにも、今回のように社会環境は常に移ろいながら、それに伴って社会も人も経済も医療も進化し、発展してきたようにも思います。

新型コロナのもたらす影響は計り知れませんが、この過程を経てこそ新たな時代への第一歩でもあり、また、維持し続けることの難しさと、思うようにならない厳しさを教えられているようです。

さて、今話題の「GO TO トラベル」をはじめとする様々なGO TO事業。少しずつ経済活動の活性化や人の動きを後押ししようと、国をあげての政策も始まりました。予定通りならば、東京オリンピックや国体などでおそらく国の内外を問わず多くの人の動きで交通も宿泊も、飲食や観光地など大変な大賑わいであったかもしれません。

しかし今、人の動きは止まり、経済は止まりました。多くの飛行機は飛ぶことなく、地上に張り付いてしまいました。特に航空業界は、各国の厳しい入国制限も影響して国際線が飛ばせないとあっては、そのダメージはとりわけ深刻な事態との新聞報道もあり、改めて「経済」というものが人の動きと直結していることを痛感しました。

私が大好きでよく利用していたタイ航空も、このコロナ感染拡大が追い打ちとなり、とうとう経営破綻。飛行機のフライトや事業はなくならないものの、今後も厳しい社会状況の中で経営再建を進めるそうです。

けれども、感染症を食い止めるためには、まず人の動きを規制しなければならないことも事実ですし、人の動きと共にウイルスも回っていくこともまた辛い現実です。ですが、これまでを振り返ってみてそれ以上に深刻に感じるのは、過敏な恐れからいつの間にか私たちの心には偏った見方が生じてしまいました。自粛警察という言葉に象徴されるように、無意識のうちに人の行動を監視するようにもなり、県外からの来訪者には殊更厳しい目を向けるようになってしまいました。疑いの目はどんどん人との距離を離し、感染することはとてもいけないことであるかのような風潮は、ウイルス以上に人々の心に蔓延してしまいました。

そのような中、とあるお寺さんの掲示板に掲げられた言葉がSNS上で紹介され、とても印象深く響きました。

「ウイルスよりも怖いのは人間だった」

今はもう誰が感染しても不思議ではない世の中だと思っています。だからといって感染対策をおろそかにすることはありません。新型のウイルスであることや世界規模での感染拡大を考えると、むしろ感染症に対する私たちの意識は格段に向上しました。「手洗い・うがい」といった基本的生活習慣は、今まで以上に徹底されるようになりました。

ただ、これまで経験したことのないwithコロナ社会や、いわゆる新しい生活様式が馴染むまでにはまだまだ時間を有します。変わりつつある環境の変化の中で、徐々に徐々に私たちの心も穏やかに導いていけるよう、お寺から、僧侶から、発信していきたいと思っています。やはり人と人との間で生きていくのが人間ですから。

【確認事項】このページは、鹿児島教区の若手僧侶が「日頃考えていることやご門徒の方々にお伝えしたいことを発表する場がほしい」との要望を受けて鹿児島教区懇談会が提供しているスペースです。したがって、掲載内容がそのまま鹿児島教区懇談会の総意ではないことを付記しておきます。