テレビ番組を見ていると、時折その時々で流行している「若者言葉」が取り上げられることがあります。発生源は中学生や高校生だったりするようですが、見ているとその言葉だけでは全く意味のわからない言葉がよくあります。その度に、世代間格差のようなものを感じます。
この若者言葉は、おそらく昔なら一部の地域で口にされても、いつのまにか消え去ったりしたのかもしれませんが、現代はマスコミで取り上げられたり、インターネットで拡がったりして全国各地に浸透し、やがて多くの特に若い人たちの間で使われています。
言葉は、次々と生み出され、多くの人に語られることによって定着していくのですが、私的な場面では何の問題もなく使えても、仕事や公的な場面で口にできるかとなると、やはりそれは難しかったりするようです。そうすると、ふと気になるのが、日頃この若者言葉を常用している人は、仕事、あるいは公的な場面できちんとした言葉遣いができるのだろうか…、ということです。
「余計なお世話だ」と言われればそれまでのことですが、やはり少し気になります。たとえば、テレビでよく耳にする「超ウケるんですけど」という言葉ですが、「ウケる」という言い方は、上から目線の評価にも聞こえますし、人によっては茶化されているように聞こえるかもしれません。言い換えると「非常に面白いですね」となります。また、同じようによく耳にする「ぶっちゃけ…」は、思っていることを素直にいうという意味で使われていますが、「率直に申しますと…」となります。或いは、少し堅苦しい言い方ですが「ありていに申しますと」という言い方もあります。
この他「うーん、ビミョーですね」という言葉も耳にします。「うまく言い表せませんが…」とか、この「ビミョー」は、どちらかというと否定的なニュアンスが強いので、「いいとはいえないと思います」と続けると良いかもしれません。
また「それってヤバイですね」という言葉も聞きます。もともと「ヤバイ」は「不都合」とか「危険」という意味の隠語でしたが、最近は「すごい!」といえ意味でも使われているようです。「ただごとではないようですね」とか、「すごいですね」となります。
また、「真面目」の略語として使われているのが「マジ」です。よくテレビドラマとかで「マジっすか」という言葉を耳にしたりしますが、「真剣」「本当ですか?」といった意味で使われています。驚きを伴うときは、「驚きました」で十分です。「~っすか」という表現は用いません。
これらのことから分るのは、若者言葉の特徴は、同世代間で使われているため、相手に対する「敬い」や「へりくだり」の気持ちがあまり意識されていないということです。そのため、仕事や公的な場面で用いられている言葉で言い換えようとすると、自分と相手との関係を表す大切な表現手段として用いられる「敬語」を理解していないと、言葉に窮してしまうかもしれません。
「敬語」は、使い方を間違えると、相手に不快な思いを抱かせたり、礼を失することになったりします。双方が敬語をよく理解していないと問題はないかもしれませんが(実は、それも問題なのですが…)、間違った使い方をしていてもそれに気付かず、相手方だけが理解していると、良好な関係が失われることもあったりするかもしれません。
その「敬語」ですが、以前は「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の三つに分けられていたものが、2007年に文化庁がまとめた「敬語の方針」から、「尊敬語」「謙譲語Ⅰ」「謙譲語Ⅱ」「丁寧語」「美化語」の五つに分けられるようになりました。
尊敬語は、その名の通り相手や第三者を敬って使う言葉で、相手の動作や行為、状態を立てて表現します。「〇〇さんが、いらっしゃる」とか、「お越しになる」「帰られる」という表現になります。
謙譲語Ⅰは、自分側の行為物事を低めることで、行為の及ぶ相手を高めて敬意を表すものです。「拝見する」「お伝えする」「ご連絡する」などで、「書類を拝見します」とか「明日、ご連絡します」と言います。
謙譲語Ⅱは、自分側の行為や物事を、聞き手や読み手に対してへりくだって述べ、敬意を表すものです。「参る」「申す」「致す」などで、「これから参ります」とか「母が申しておりました」と述べます。
丁寧語は、話し手の丁寧な気持ちを表現するもので、物事を丁寧に言い表しますが、立場を高めたり低めたりする働きはありません。語尾に「です」「ます」「でございます」をつけます。「これが保証書です」「これから出発します」「粗品でございます」と言います。
美化語は、話し手の表現の上品さや美しさのレベルを上げるために用いられる敬語で、言葉の始めに「お」「ご」をつけることによって、物事を美化します。ただし、何にでも「お」や「ご」をつければよいというわけではありません。
「お電話です」「お土産です」という言い方をします。
若者によって次々と生み出され、時にはその年の流行語にもなったりする若者言葉ですが、やはり敬語の基本だけでも身につけておかないと、社会に出た時に会話をしたり文章を書いたりする時に苦労するかもしれませんね。