大切な方と悲しい別れをされて、その方は今、浄土へ生まれて仏になられているのか、それとも地獄などの迷いの世界にいらっしゃるのか気になっていらっしゃるのかもしれません。このご質問へのお答えは僧侶によっても分かれるように思いますが、私なりの答えを書かせていただきます。
正直に申し上げますと、その方の命の行方は私にはわかりません。しかし、その方の命の行方については何の心配もいりません。
浄土真宗では、阿弥陀仏という仏さまを大切にしております。
その阿弥陀仏は昔、法蔵菩薩であったときに、『生きとし生きるすべてのものを救える仏になりたい』と願いを立てられました。ここでの救いは、命終わったときにお浄土という国に生まれさせ(往生)、尊い仏の命に仕上げる(成仏)ということです。そして、その願いを完成すべく、兆載永劫というはかりしれない時間修行をされて、その願いを成就し、阿弥陀仏となられました。
そして今、「あなたを救える仏はもうここにいるから、命の行方は阿弥陀にまかせろ」とすべてのものに呼びつづけておられます。
『執持鈔』というお書物に「往生ほどの一大事、凡夫のはからふべきことにあらず、ひとすぢに如来にまかせたてまつるべし。」と記されてあります。
これは、命終わって浄土へ生まれるという大きな出来事は、私たちが、いろいろと心配することではありません。ただ一筋に、阿弥陀仏におまかせなさいませとのお示しです。
大切な方の命の行方、わたしの命の行方について、何の心配もいらない阿弥陀仏のおはたらきがあることが有難いなと思いつつ、いつも葬儀などの仏事をつとめさせていただいております。