日本では携帯電話の保有台数が、人口よりも多くなっているのだそうです。
最初は電話機能だけだったものが小型化に伴い急速に普及し、やがてメールが出来るようになり、その後カメラ機能を始めとする様々な機能が次々に付加され、近年は超小型パソコン+電話といった内容のスマートフォンが携帯市場を席巻しつつあります。
ほとんどの場所で電話やメールがつながり、とても便利になりました。
ところが、その一方、メールの影響で最近の若い人は
「簡潔に問答を終える『情報交換』の面ばかりが先行し、言葉に気持ちを込める『感情交換』の面が格段に減った」
といわれています。
例えば、ある人がジーンズショップに買い物に行った時、気に入ったジーンズを見つけ、店員に自分のサイズに合うものがないか聞いたところ、即座に
「(在庫は)ありません」
と。
返って来た言葉はそれだけで、すぐに別の所に行ってしまったそうです。
その人は
「買いたかった気持ちはその瞬間に消えた」
そうで、
「目的のない会話は無駄なのだろう。
でも、答えは速ければいいものではない。
その場、その時の答えだけでは、先がないのに」
と述べています。
また
「目的のない返事だけでなく、メールの返信も速さに追われている」
と言われます。
「モバイル社会研究所」
の調査によれば、中高生の8割以上が携帯電話のメールを返信するまで30分以上かかると
「遅いと思う」
と回答。
「10分以上」
も中学生で6割近く、高校生で7割近くもいたそうです。
30分以内には返信する
「30分ルール」
という規範も生まれ、そのため電車に乗っても食事中でも携帯電話を手放せない若者が増えています。
この状況は
「携帯のメール交換を速く、頻繁にこなすことで友人とのつながりを感じているが、やがて返信することに強迫観念を感じ始めるのでは…」
と、懸念されています。
友人とのメールなど本来はたわいないことが大半です。
それなのに、速さや数に追いまくられ、人との付き合いがメールというデジタルになり、速さや数が目に見えるようになってしまったために、便利さの一方で負担が増えてしまったというのは、何とも皮肉な現象です。
携帯メールとともに、最近は短文をつぶやくミニブログ
「ツイッター」
も広がっています。
ある大手通信会社ではグループ全社員にツイッター利用を奨励しました。
「効率的に社内の経営方針を共有したい」
というのがその目的でしたが、同社の男性社員は
「すぐに反応があるので、こちらもすぐに書き込まなければならない気分になる。
ツイッターばかりに時間が取られ、仕事に集中できない社員もいる」
と愚痴をこぼしています。
効率化を企図したことが、むしろ仕事への集中力を削いでしまうようでは、極めて問題です。
確かに私たちの社会は、パソコンや携帯の普及で、速く効率的な世の中になりましたが、その分、自身をゆっくり考えたり、余裕をもって楽しむ時間が減ってきているのではないでしょうか。