『春彼岸 仏の光のあたたかさ』

今年も春のお彼岸の時節となりました。

お彼岸は昔から

「暑さ寒さも彼岸まで」

と言われますが、暑くもなく寒くもなく昼夜の時がほぼ同じで、日は真東から昇り真西に沈むこの好時節に仏徳を讃嘆するという日本独特の仏事です。

朝起きてから夜寝るまで、時には寝ている間でさえも

「あの人がどうだ、この人がどうだ」、

「あれが欲しい、これが欲しい」

と煩悩のつきない私たちに、

『あなたは、あなたのままでいいんですよ。そのままのあなたの姿を必ず仏になる身にさせますよ』

とよびかけていてくださるのが、阿弥陀如来の摂取(摂めとって捨てない)の光明(救いのはたらき)です。

親鸞聖人は、「摂取」の左訓に

「摂はもののにぐるを追はえとるなり」

と説明しておられます。

これは、阿弥陀如来の摂取の光明は、正しい道を求める者は勿論のこと、煩悩にまなこをさえぎられている私たちだからこそ

『救わずにはおれない』

というお心を示されたものです。

そのお心がどんな時も、私がどこにいようとも、この私に向けられていると気づかされたとき、ただ ただ報恩感謝のお念仏を称えるばかりです。

阿弥陀如来の救いのはたらきが、いつでもどこでも私に至り届いて下さっていると思うと、今か今かと待っている新芽のように生きる勇気が湧いてきて、身も心も春の陽気のように温かくなる気がいたします。