「心無限の力」(上旬)心はずっと君と

======ご講師紹介======

有村佳子さん(指宿ロイヤルホテル代表取締役)

☆演題 「心無限の力」

ハ−トフル大学は、1年に10回開催されます。

そのため、5月と6月は過去のバックナンバ−から掲載いたします。

5月は、指宿ロイヤルホテル代表取締役の有村佳子さんのご講話です。

有村さんは、さいたま市生まれ。

昭和三十四年三井信託銀行に入社。

昭和四十年に有村芳郎氏と結婚、指宿で旅館経営を始められます。

昭和四十八年に指宿ロイヤルホテルを創業、副社長に就任。

昭和五十七年より同代表取締役に就任。

県観光連盟委員、いぶすき町づくり協議会会長。

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夫の有村芳郎が死に近付いていく中で、

「君と最後の話をしよう」

と言ってくれた時がありました。

もし、あの最後の話をしていなければ、私は立ち直れなかったかもしれません。

苦しい息の中から、彼は今まで自分がどういう思いで生きてきたのかを一生懸命話してくれました。

肺結核で死んでも仕方がなかったのに、社会復帰が出来てしたいと思っていた事業も思う存分することが出来た。

本当に幸せな人生だったと言ってくれました。

また、僕は君と結婚して普通の人の三倍は楽しかったと言ってくれました。

そこで私も

「あなたと結婚する時に、私の父と一緒に実業家になる三つの夢の話をあなたから聞きました。

ごめんなさい。

あの時、あなたになんか出来っこないと思いました。

言うのはタダだと思って聞いていました。

あなたは出来ない条件ばかりの中、三つの夢全てをかなえられました。

ホテルも出来ている。

焼き物も出来ている。

観光と農業が一体となった実験農園が今出来ようとしている。

どうかそれを見てください」

と、言いました。

すると有村は

「もう僕にはその時間はない」

と言いました。

そして

「医者から死の宣告を受けた時、事業をやりたいとわがままを言った。

でもそれは、まだこの命が続くと思ったから言った。

今、この命が終わる時がきたんだ」

と続けました。

「君もいつかこの世を終わる日が来るだろう。

その時、生きて良かったと思えるような人生を歩んでおくれ。

僕は死んで姿が見えなくなる。

でも心はずっと君と一緒に生きてあげる」

と言ってくれました。

そして息を引き取ったのです。

お葬式がすんで、ホテルに戻りました。

泣いてなんかいられません。

社長、副社長がいない間に資金繰りがどん底状態で社員に給料が払えない状態になっていました。

四十一歳で社長として放り出されたのです。

怖かったのは社員の目です。

社長が死んで奥さんが社長になったけど、この会社はどうなるのだろうと思われているのが分かりました。

私は、一人ではやっていけないと思いました。

そして、会社を処分してしまおうとも思いました。

しかし、このことがとんでもないことを引き起こすのです。