以前
「お仏壇は先祖の霊をまつるところではないのですか?」
と、ご門徒の方より問われたことがあります。
仏教では、固定的な実体としての霊魂を否定(諸法無我)しています。
そのため、ご先祖の霊魂のようなものがお仏壇に入っていて、しかもその霊魂が生前の意思や感情を抱いたまま存在しいるなどということは認めていません。
まずお仏壇とは、生きている者が先祖の霊を畏敬(いけい)し、慰めるための場所ではないということを理解する必要があります。
もし亡くなられた方を祀る場所であるとするならば、それはたとえ外見はお仏壇であっても、その内実は先祖壇ということになります。
お仏壇とは、先祖の霊をお祀りするところではなく、私たちを流転の迷いの闇から救ってくださるお浄土の救主、阿弥陀さまをご安置する場所です。
確かにお仏壇へのお参りを通して亡きご先祖の方々を偲ぶということはありますが、それは亡き方々が阿弥陀さまのお浄土へと往生されたことを偲ぶという意味があるからです。
お仏壇は、ご先祖を祀るために安置するわけではありません。
今、生きている私たちが、阿弥陀さまを中心とした生活をし、こころの拠り所としていつも身近に仰ぎながら生活するためです。
私たちは生きていく中で、様々な出来事に遭遇します。
楽しいことや嬉しいことがある反面、事故に遭ったり、病気になったり、大切な人を失ったり…と、人生にはまさに悲喜こもごも、様々な出来事が起こります。
けれども、どんな状況になろうとも常にこの私を支え見守り続けて下さり、この世を力強く生き抜いていく智慧と勇気を与えて下さる阿弥陀さまが、私の前にまで姿を現して下さる、それを象徴的に表したのがお仏壇です。
朝夕、家族みんなでお仏壇にお参りし、お念仏申すことで、安心して生き、安心していのち終わっていくことのできる日暮しを送らせていただければと思うことです。