優れた人材は社会の財産(上旬)「無」から「有」を引き出すためのムードづくり

ご講師:豊重哲郎さん 鹿屋市串良町柳谷(やねだん)自治公民館長

「やってやれないことはない」

最初に、皆さんにこの言葉を贈ります。

やる気を起こせば、どんな奇跡が起きるのか。

今日は、私が20年間自治公民館長を務め、取り組んできた鹿屋市串良町柳谷(やねだん)という集落での事例を紹介します。

私は今から20年前、55歳のときに

「哲郎、お前に3年任せるから何か集落でやってみてくれんか」

と先輩たちからの推薦でやねだん自治公民館長に抜擢されました。

当時は自主財源なし、笑いもなし、希望もなし。

ゼロどころかマイナスからの挑戦でした。

唯一の資源は「人」。

人財という財産を生かす逆転の発想でスタートしました。

地域づくりにはいくつかポイントがありますが、まず、町内会に限っていえば、基本は高齢者と中間層と未就学児のバランスが大事です。

私はまず、少子対策と高齢者対策を並行してやって、人口の推移を継続させることが大事だと考えました。

さらに10年先を見越した地域活動の方程式を持って、ゆりかごから墓場までの人たちに「そうだよね」って分かってもらうことでした。

それには説得では駄目です。

「納得」してもらうために納得工作を仕掛けるのも私の務めでした。

私は立ち位置を変えて、自ら汗をかいて近づいていく。

汗で語らないと地域の人を納得させることはできなかったんです。

中でも地域で一番大切なのは先人の偉業を尊重すること、そして基本は目配り、気配り、心配りです。

私はそれを続け、冷えかけた「やねだん」集落の空気を根底から温め直しました。

今、地域が崩壊しているところが多くあります。

地域住民が誰だか分からない。

「見るな、行くな、電話がきたらすぐ切れ」と。

このような地域社会では、子どもが犠牲になっていると思いませんか。

社会教育的なしつけやモノマネ的労働やいろんな活動が受け皿になっている地域と、何も考えず何もしない地域とでは9年間で子ども自身に格差が出るのは当たり前。

私は地域の子どもは皆ファミリーだと思っています。

顔と名前が分かっているから、大人が子どもを叱れます。

ぜひ高齢者からも多くの知恵を学んでいただきたい。

そして、重要ポイントは安心安全。

食材だけでなく、女性や子どもが夜でも平気で歩ける安心安全な地域こそが基盤だと思うのです。