「米軍基地とわたし」(下旬)アメリカと日本、本土と沖縄

 私たちが駐留アメリカ軍に期待しているのは、何かが起こった場合には日本を助けてくれるだろうということです。

抑止力の主体はアメリカ軍です。

日本にとって、沖縄にアメリカ軍の駐留が必要だと政府は説明しています。

そして日本人の多くがそのように信じています。

でも、ここで「?」マークが出てくるのです。

アメリカは、本当に守ってくれるのか。

疑問が出た瞬間、抑止力も危ぶまれます。

 政府は抑止力に関して地理的な優位性を強調します。

「沖縄はアジア太平洋地域における最適の場所にある。沖縄にアメリカ軍が駐留していれば抑止力が高まる」

といいます。

でも実に曖昧で怪しいです。

 湾岸戦争や過去の戦争でアメリカ軍は50万とか60万とかの兵士を動員しています。

しかし、沖縄にはたった1万8千人の海兵隊しかいません。

大きな戦争になった場合、本国からドドッとやって来るのです。

でも今は平時です。

平時の場合には人道支援や災害支援が主になります。

沖縄の海兵隊というのは、平時の配備でとても小さいのです。

つまり平時においてアジア太平洋地域で活動するのに沖縄は適当な場所だということです。

しかし、必ずしも沖縄でなければならないということでもありません。

 なぜ沖縄に基地が集中しているのが歴史を振り返ってみることが必要です。

なぜ日本はアメリカ軍を受け入れることになったのかという質問に対する極端な答えは、戦争に負けたからです。

その戦争はどういう戦争だったのかというと、沖縄は本土決戦にいたるまでの時間稼ぎのための「捨て石作戦」でした。

そこに巻き込まれた住民がいて、沖縄の悲劇が生まれたのです。

 当時、沖縄をアメリカはどのように見ていたのかという資料があります。

民事ハンドブックという資料ですが、沖縄戦の1年前の1944年に作成されています。

民族、経済、政治、文化、風習、言語、伝統、家族のつながりなど幅広く、沖縄のことを徹底的に調べ上げているのです。

その中で、日本本土との関係について

「日本人は琉球人を人種的に同等とみなしていない。したがって色々と差別されている。ところが、琉球の人びとは日本人に劣等感を抱くどころか、彼らの伝統と中国との長い文化的な絆に誇りを持っている。したがって、日本と琉球との間には、アメリカが政治的に理由しうる軋轢の潜在的な根拠がある」

と書かれています。

 だから差別を受けている場所ではアメリカが多少手荒いことをしても日本本土ではそれほど大きな問題にはならないということだったのです。

アメリカの基地としては、非常に都合がよい、だからこんなに集中しているのだと思われます。

 アメリカはアジア太平洋地域に10万人の兵士を派遣していますが、そのうちの4分の1が沖縄です。

こんなに軍事化されている島は、他に例がありません。

 私は、安全保障というのは争いを避けるということだと考えています。

だから敵であっても、あるいは仮想敵国であっても、例えば中国とも仲良くなろうと努力をすることが大切だと思います。

そうでないと、敵や仮想的に対しては軍事で身構えないといけない。

これは国防です。

安全保障と国防は違います。

今、日本は国防のためにいろいろな政策が変えられようとしています。

憲法も変えられようとしています。

安全保障を行うのか、国防に向うのか、どちらかなのか。

アジア・アフリカ地域で、アメリカは安全保障を行っています。

中国も一緒にやろうとしています。

私は、日本は孤立するのではないかと心配しています。

 仏教の教えに「兵戈無用」という言葉があります。

武力も武器も必要ないという状態のことを表しています。

私は、これこそ安全保障の理想だと思います。

この尊い教えを信奉していくことが、とても重要だと思います。