三十三回
真宗禁制と本願寺(その二)
本願寺は真宗禁制下の薩摩門徒に対してもさまざまな手段をこうじて布教と募在にあたりました。
その主要を事柄として消息の下付、免物の下付、使憎の派遣を掲げることができます。
前回に引きつづき、これらの問題を整理して本願寺が真宗禁制下の門徒にいかに対応したかうかがってみましょう。
②免物の下付
本願寺は薩摩門徒に対して、特別に配慮し、さまざまな免物(本願寺の許可のもとに下付される法物)を下付しました。
文化八年(1811)、河野儀右衛門が筆録した
『申物諸願方之記』並びに『諸事心得之記』には次の記事があります。
二つの記録ともに、末寺・門徒から上申される本尊、聖教等の下付、官位昇進・住職継職・得度願い等の取扱いに関する備忘録で、本願寺の役人が所持していたものです。
この記録には
○本願寺は薩摩門徒に対して他の地方では許可されなかった親鸞・蓮如二尊像御影を特別に下付していたこと。
○御本尊・御名号・木仏尊像・聖徳太子御影・七高僧御影・親鸞御影・親鸞・蓮如連座二尊像・歴代御影・御絵伝は特別に金欄の表具がなされたものであったこと。
そして小幅をものであったこと。
○他国には許可されなかった二寸の御名号が下付されたこと。
○薩摩だけに小幅(二寸)の本尊の裏書に御染筆(門主の真筆)がなされたこと。
○薩摩の講員が冥加金等を上納に上山した時は本願寺の白書院で御礼・お菓子で接待すること。
等々の記事があります。
こうして本願寺は、薩摩の門徒に対して特別に配慮し厚遇したのでした。