さつまの真宗禁教史 12月(後期)

三十六回

真宗禁制と本願寺(その五)

⑤無崖の名誉回復

前回までみてきましたように本願寺は殉教した僧無崖を無宿人として処理しまいました。

そして無崖の名誉が回復したのは大正12年でした。

この年本願寺は立教開宗七百回記念法要を厳修するにあたり無崖を次のように追賞しました。

ここに無崖の名誉がようやく回復されたのでした。

追賞

宮崎県北諸県郡山田村

正定寺

其寺衆徒無崖ハ夙ニ愛山護法ノ念深ク、不惜身命、以テ広如宗主ニ奉仕シ、其功顕著ナリトス。

仍テ今般褒賞例第二条第二号第四条ニ基キ、其寺永代上座二等ヲ特許ス。

大正十年六月二日

執行長 松島善海

追賞

宮崎県 正定寺

釈無崖

法名ヲ拝シ険ヲ冒シテ薩摩ニ人リ、教化ニ従ヒ中途発覚自刃ス。

其功少カラズ。

因テ今般立教開宗七百年紀念慶賛法要修行ニ際シ之ヲ表彰ス。

大正十二年四日十五日

釈 尊由印

執行 前田徳水印

〈この項は「乗海寺無崖師殉難記」)・「薩摩国諸記」(日本庶民生活史料集成第十八巻)所収を参照しました。〉