2019年12月法話 『普通の日々も私の大切な足跡』(前期)

最近、毎週のテレビドラマを見たり、ラジオを聞いたりしていると“えっ、もう一週間経ったんだ”とか、“いつの間にか、もう一か間経ったんだ”と思ったりすることがよくあります。

にもかかわらず、時の流れの速さを改めて感じつつも、ただただ何となく普通に、そして日常のことに追われるような中に日々を送っている毎日です。

アメリカのアップル社の設立者の1人であるスティーブ・ジョブズさんは17歳の頃、次の言葉に出会ったそうです。

「毎日を人生最後の日だと思って生きよう。いつか本当にそうなる日が来る。」

今こうして生きている以上、誰しもいつかは必ず「死」を迎えます。

考えてみれば、その通りなのですが、私たちは普段の生活では、なかなかそのことを考えずに過ごしています。

自分のいのちにとって、最後の日がいつ訪れるのか…。

それは、何年、あるいは何十年か先かもしれませんし、自分が知らないだけで、もしかすると今日か明日かもしれません。

「その日」が、いつ訪れるかは、たとえ自身のことであっても知りようがありませんが、どれほどそのことから目を背けようとしていても、必ずこのいのちの終わる日を迎えなければならないという事実の中で、今こうして生きているというのが、私たちの偽らざる事実です。

そうすると、気がつけばあっという間に過ぎていく日々も、当たり前のように普通に過ごす日々も、「いつかこの人生には必ず終わる時がくるのだ」ということに目を向けると、実は私にとって一日一日が全てかけがえのない大切な一日であったのだということに気づかされます。

振り返れば、この一年、どんなことがあったのか…。

思い出そうとしてもなかなか思い出せないような、取り立てて語ることもないような平凡な一日の連続であったとしても、どの一日が欠けても私は今ここに生きてはいないのです。

まさに、この私の人生においては、一日一日、そして一瞬一瞬が私の足跡となっていくのです。

「普通の日々も私の大切な足跡」という言葉は、一年の終わりに当たって、常に一度きりの尊い一日を生きているのだということを教えてくれると共に、“このいのちをどう生きていくのか”ということを常に私に問いかけているように思われます。